日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P321
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発表要旨
大学生が肌で感じたアフリカ
広島女学院大学国際教養学部「アジア・アフリカフィールドワーク」の取り組みとその効果
*伊藤 千尋
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抄録
1 はじめに
 国内外の地域情報に、容易にアクセスできるようになった現代社会においても、実際に現地へ赴き、見聞きすることの重要性は失われていない。特に、アフリカをはじめとする途上国に関する日本語の情報は限定的であり、中学・高校の地理教育においてもアフリカが取り扱われる割合は少ない。そのため、多くの大学生はアフリカについて偏ったイメージを持っている(船田, 2010)。
 一方、アフリカは2000年代以降、経済成長をとげ、いまや世界が注目する「最後のフロンティア」へと変貌した。中間層の出現、大規模な都市開発、中国によるアフリカ進出、携帯電話の急速な普及といった出来ごとは、現代アフリカを象徴する事象である。大学生、ひいては一般の多くの人が持つ「アフリカイメージ」と「現在進行系のアフリカ」との間にあるギャップをいかにして埋め、多角的な地域理解を主体的に築かせることは、地理教育における重要な課題である。
 報告者は、広島女学院大学国際教養学部において、2017年度「アジア・アフリカフィールドワークI・II(以下、AAFW)」を担当し、学生6名とザンビア共和国を訪れた。本報告では、その取組を紹介するとともに、参加者との対話や報告レポートから、ザンビアを訪れたことによる教育効果について検討する。また、海外フィールドワークを実施する上での課題についても検討する。

2 授業の概要
 AAFWは国際教養学部の2年生以上を対象としている。参加学生は、ザンビアでの研修だけでなく、事前・事後学修、学内報告会での発表、報告論文の執筆に取り組む。
 今回の参加者は6名(4年生2名、3年生4名)であり、アジアやアフリカに関心をいだいている学生がほとんどであった。
 現地での滞在期間は、2017年8月26日から9月5日までの11日間である。

3 FWの内容
 現地でのプログラムは、「アフリカの「現在」を肌で感じ、日本とアフリカの関係、経済発展や開発援助がコミュニティに与える影響について考える」ことを目的とて、報告者が企画した。主な行き先は、首都ルサカ、報告者が調査しているチルンド県農村部、地方都市シアボンガ、ローワーザンベジ国立公園、である。
 首都ルサカでは、ザンビア大学との交流イベント、日系企業訪問、国際協力に携わる日本人へのインタビュー、在ザンビア日本大使館表敬訪問を実施した。報告者が調査している農村及び地方都市では、住民の生活・文化を体験した。国立公園では、野生動物観光を体験しながら、アフリカの自然保護政策について考えた。

4 効果・課題
 参加学生の多くが、最も印象深かったプログラムとして、農村部での滞在を挙げた。その他には、都市部の景観(ショッピングモール、渋滞、中国語の看板)や、携帯電話の使用などに特に関心を持っていた。発表では、報告書やアンケート結果に基づき、参加学生のアフリカイメージの変化について詳しく報告したい。
 課題としては、引率教員の負担や、学生の金銭的負担、現地での通信手段などが挙げられる。
 今回は、滞在中に大きな病気や怪我はなく、トラブルに巻き込まれることもなかった。しかし今後、大学だけでなく、中学・高校においても、国内外での臨地教育の機会が増加する状況において、様々な状況のリスク、トラブル対応についての情報を共有していくことが重要であると考えられた。
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