日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 437
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発表要旨
北上低地帯北部における地形・地質構造の再検討
*渡辺 満久越谷 信
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抄録
1 はじめに

北上低地帯北部においては、新第三系と第四系との境界にMBF(Master Boundary Fault)があり、MBFより数100m~1km程度東方(低地側)には後期更新世の地形・地質を変形させるFAF(Frontal Active Fault)が認められている。また、FAFの隆起側(西側)には東上がりのSAF(Secondary Antithetic Fault)がある。なお、FAFよりさらに1~1.5km東側にも活断層が存在するという見解もあるが、演者らはこの断層の存在には懐疑的である。活断層の位置形状は、地形・地質構造解析のみならず、地震規模想定や地震被害想定などにも係る重要なデータである。上記見解の相違点を検証すべく調査を継続してきたので、その結果を報告する。

2.断層変位地形

本地域には、複数の河成段丘面(M面:MIS 5d、L1面:MIS 2、L2面:MIS 1)が分布している。L1面の鉛直変位量は、6~7m(FAF),1m程度(SFA)である。FAFの東方には、新第三系の火山岩類から構成される飯岡山・湯沢森・城内山・北谷内山などの丘陵が南北に連なっている。小坂ほか(2011)は、これらの丘陵の東縁部において、後期更新統が東へ撓曲(西側隆起)する露頭を観察し、周辺にはL2面に変形が見られるとした。また、城内山付近のL1面には幅数100m程度の膨らみが形成されているとし、丘陵の東縁部に活断層(F3断層)を認定した。

小坂ほか(2011)の露頭のすぐ東側では、後期更新統が西へ急斜(20~30度)していることを確認できた。すなわち、後期更新統は局部的に向斜状に変形しているのであり、露頭の東西で地層に高度差は認められない。L2面の変形とされたものは、合流(合成)扇状地面の地形境界を横切る測線で認定されており、初生的な起伏を断層変位と誤認している可能性がある。また、城内山付近においても、扇状地面の初生的な起伏を横切らなければ、L1面に異常は認められない。一部の道路近傍ではL1面がわずかに盛り上がっているようにも見えるが,全体としてL1面は滑らかに連続している.盛り上がっているように見えるのは、人工改変による可能性が高い。

3.地質構造

楮原ほか(2011)は、城内山付近で反射法地震探査を実施し、F3断層は城内山の安山岩類を地下で切断する逆断層であると解析している。断層面は、標高-1,000m付近から地表まで連続するとされている。ただし、この反射断面を見る限り、リズミックな反射面の部分が安山岩類にアバットしているようにも見えるので、必ずしも断層面を想定する必要はないとも考えられる。

越谷ほか(2012)は、城内山周辺地域の地質調査と重力探査を実施し、地下構造を検討した。その結果、城内山は中部中新統の飯岡層(火山岩類および砂岩)の堆積後に貫入した岩体であり、鮮新-更新統の堆積岩類(志和層)はこの貫入と同時に堆積を始めていることが明らかになった。MBFやFAFが活動を始めるのは、志和層上部の堆積期からである。密度構造モデルを適切に想定すると、本地域の重力異常は、城内山のような火山岩体の存在によって説明できる。すなわち、城内山の貫入岩体が志和層に乗り上げるような断層構造は想定しにくい。

4.考察およびまとめ

想定されるF3断層トレースに沿っては、西側隆起の断層の存在を示すような変動地形学的あるいは地質構造的な異常は認められない。城内山付近では、局所的にわずかな盛り上がりが存在するかもしれない。しかし、これを標高-1,000から連続するような断層による変型と考えることは非常に困難である。

本地域の重力異常は、火山岩体の存在によって説明することが最も妥当であり、F3断層の存在を示してはいない。反射断面の解釈については、慎重に再考すべきであると考えられる。

【文献】 楮原ほか,2011,地学雑誌,120.小坂ほか,2011,活断層研究,34.越谷ほか,2012,日本地球惑星科学連合2012年大会,SSS35-08.
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