日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 839
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発表要旨
南アフリカにおける非木材林産物の商品化と資源管理
企業と協同組合によるマルーラ製品の販売
*藤岡 悠一郎
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抄録
1. はじめに

 植物の果実や油脂などの非木材林産物(NTFPs)は、アフリカの多くの農村において、自給用に採集、消費されてきたが、近年では国際機関やNGOなどが現金稼得源としての利用に注目し、各国で積極的に利用されるようになっている。そうしたなか、企業による加工品販売に住民が強く関わる事例や住民が協同組合を立ち上げる事例などが、アフリカの農村でみられる。本研究では、南部アフリカの半乾燥地域に広く分布する、ウルシ科の落葉高木であるマルーラ(Sclerocarya birrea)の商品化とその影響について、経済成長の著しい南アフリカに注目して検討した。マルーラの果実は、南部アフリカの各地で酒や油の原料として広く利用されていることが知られている。南アフリカでは、酒造会社Distell社が1983年にマルーラの蒸留酒を開発し、現在では南アフリカの主要な土産物となり、海外にも輸出している。こうした企業および協同組合の立ち上げなどにより、住民によるマルーラの利用や資源管理がいかに変化しているのかを明らかにした。

2. 方法

 南アフリカ北東部リンポポ県に位置する地方都市ファラボルワとその周辺のタウンシップ、農村において現地調査を実施した。ファラボルワには、Distell社が開発したアマルーラという蒸留酒をつくる工場があり、そこの担当者にインタビューを行った。また、周辺のタウンシップに立ち上げられた協同組合を訪れ、組合員に聞き取りを実施した。さらに、街中やタウンシップでマルーラの果実を採集している人に聞き取りを行い、果実の利用方法などに関する情報を取得した。

3. 結果と考察

(1)マルーラの分布:南アフリカ北東部に位置するファラボルワは、市街地の周辺に複数のタウンシップや農村が立地している。この地域はマルーラが自生する地域であり、市街地やタウンシップ、農村に多数のマルーラの木が分布していた。これらの木の多くは、人が意図的に栽培しているものではなく、半栽培状態であった。

(2) マルーラの商品化:Distell社は、マルーラの果汁を原料にした蒸留酒アマルーラを1994年から国際市場で販売し、現在では100か国以上に輸出している。その原料となるマルーラの果実の80%以上をファラボルワ周辺20km圏内で入手していた。工場ではマルーラを栽培してはおらず、原料のすべてを地域の住民から工場が買い取っていた。住民が果実を集めると携帯電話で工場に連絡をし、担当者が車で回収し、工場でお金を支払うという仕組みになっている。他方、2000年以降、ファラボルワ周辺のタウンシップにおいて、マルーラ酒や油の原料となる種子の仁を販売する協同組合が複数設立されていた。

(3)住民によるマルーラ利用:企業によるマルーラの買い取りが行われるなか、協同組合の設立やインフォーマルセクターでの個人的な酒の販売など、人々の自律的な生計戦略の結果として、現金稼得源としての利用が多様化していた。そして、協同組合の設置は、マルーラの木をさらに増やそうとする活動にも、限定的ながら結び付いていた。
付記 本研究は,文部科学省科学研究費助成事業若手研究B「アフリカ半乾燥地域における農地林の形成過程と機能の解明」(17K12970)の助成を受けて実施した。
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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