抄録
本発表の目的は,若者による訪日外国人旅行者に対する観光ボランティアガイド活動の展開にみられる特徴を明らかにすることである。研究対象地域は東京都渋谷区を選定した。訪日外国人旅行者に対する観光ボランティアガイド活動は,渋谷区のなかでもインバウンド需要の高い渋谷エリアと原宿エリアを中心に展開していた。渋谷区にはショッピングや食事を目的とする外国人旅行者が多く,案内要望にチェーン店を挙げるなどガイドの依頼内容にもその傾向は反映されていた。また,再開発にともなう渋谷駅構内の複雑化や周辺域の地形条件から目的地に辿り着けない外国人旅行者も多く存在するため,単純な「道案内」もまた重要な意味を有していた。さらに,語学力向上を目指す若者にとって,外国人旅行者への観光ボランティアガイド活動は生きた外国語すなわち英語を学ぶ格好の機会である。この文脈において,英語圏の外国人旅行者の訪問率が高い渋谷区は,観光ボランティアガイド活動を介した国際交流機会を創出するうえで極めて有用な地域であると看取できよう。