日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S506
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発表要旨
若者によるアニメに関連した観光・レジャーの特徴と多様性
小池 拓矢*杉本 興運太田 慧
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抄録

個人の趣味や嗜好が多様化している現代において,アニメはある限られたコミュニティだけでなく,多くの人が目にするコンテンツになったといえる。アニメと観光との親和性も強く,アニメショップの集積地である秋葉原には国内外問わず多くの人が訪れており,アニメで描写された舞台を訪れる「聖地巡礼」という一種の観光行動がメディアに取りざたされることも少なくない。

 アニメと観光に関する先行研究では,おもに地域側の視点から店舗の立地傾向やホストとゲストとの関係性が考察されることが多かった。来訪者の多い地域に着目し,そこがどのような場所でどのような取り組みが行われているのかに焦点が当てられてきた。一方,アニメに関連する店舗や聖地を訪れる人びとの行動については不明な点も多い。したがって,本稿はアニメショップへの来訪や聖地巡礼などを,アニメに関連した観光・レジャーとして捉え,アニメ文化の中心的な消費者である若者の,アニメに関連した観光・レジャーの行動の実態を明らかにすることを目的とした。その上で,これらの観光およびレジャーにおいて,どのような空間が形成され,利用されているのかについての考察をした。

 上述した目的を達成するために,Webアンケートを実施した。調査期間は2017年の9月8日から9月12日であり,対象者は東京都,神奈川県,埼玉県,茨城県,千葉県に居住する15~35歳の人々である。また,回答者の性別が偏ってしまう可能性を考慮して,男女比を同率に設定した。さらに,アンケートの最初に,「直近3年間に東京大都市圏でアニメに関連した観光・レジャー(聖地巡礼やイベントなど)をしに行きましたか?」という質問を配布し,それに「はい」と回答した人に対してのみ,本調査を実施した。その結果,計545件のサンプルを回収した。

 調査の結果,単にアニメに関連した観光・レジャーといっても,その活動の種類によって参加頻度が大きくことなることや,日常的に顔を合わせる友人だけでなく,オンライン上で知り合った友人とも一緒に観光・レジャーを行う層が一定数いることが明らかになった。さらに,アンケートの結果をもとに,来訪されやすいアニメショップや印象に残りやすいアニメの聖地の空間的特徴を概観した。秋葉原や池袋などのアニメショップが集積する場所として有名な場所だけでなく,新宿にもその集積がみられた。また,都心部にもアニメの聖地が数多くみられ,多くの若者が訪れていることが明らかとなった。

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