日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P315
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発表要旨
浅間山北麓ジオパーク内の嬬恋中学校と嬬恋高校におけるジオパーク学習とその効果
*坂口 豪
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抄録
1.はじめに

浅間山北麓ジオパークは2016年9月に日本ジオパークに認定され、群馬県吾妻郡嬬恋村吾妻川右岸域と長野原町全域をエリアとする。ジオパークの活動としては、保全、教育、地域振興の三要素がよく挙げられるが、今回は教育活動に着目する。ジオパークにおける教育活動の必要性は先行研究でも述べられており、地学雑誌においては2016年に「ジオパークの教育力―教育から学習へ―」と題した特集号が組まれ、ジオパークでの教育実践例やジオパークにおける学習活動のあり方が議論された。本発表は、2016年9月に認定された比較的新しいジオパークでの教育実践のケーススタディという位置づけで発表する。



2.浅間山北麓ジオパークと学校教育

ジオパークエリア内に位置する嬬恋中学校では、総合学習の一環として毎年1年生が全員で浅間山へ登山してきた。その際の案内に、認定ジオガイドが協力してきた。浅間山の噴火警戒レベルが上がったことにより登山ができなくなり、2015年からは「村めぐり」と題して、村内のジオサイトを中心にバスで巡る活動へと切り替えており、その案内はジオガイドが担っている。

2017年は群馬県立嬬恋高校と連携した取り組みが始まった。普通科の高校1年生を対象に、座学で浅間山北麓ジオパークの見どころを、野外実習として六里ヶ原の火山荒原をジオガイドとともに歩いて観察する内容の授業を行った。

ジオパークとしては小学校との連携も実施しており、2016年に長野原町では町内小学生向けの交流キャンプをジオパーク拠点施設である浅間園・浅間火山博物館で行った。また、嬬恋村内の小学校からもジオパークの取り組みについての出前授業の依頼があり、ジオパーク運営委員3名がジオサイトの魅力を子どもたちに伝えた。



3.嬬恋中学校村めぐり

 2017年に実施した前述の嬬恋中学校の「村めぐり」の授業において、参加生徒全員を対象に、授業前と授業後でジオパークへの認知や、ジオサイトについての理解度、興味関心度の変化を測るアンケートを実施した。



4.嬬恋高校ジオパーク学習

前述した嬬恋高校と連携した授業は2017年10月に実施した。座学と野外実習は別々の日程で行い、先に座学でジオパークの目的や見どころをスライドで解説した。野外実習では4つのグループに分かれ、それぞれの班にジオガイドがついて解説を行った。

授業の前と後でそれぞれアンケートを参加生徒全員に行い、ジオパークの認知度や、実習を通してのジオサイトへの理解度、関心度の変化を探った。
その結果、事前アンケートでは、ジオパークの認知や岩石・浅間山への関心、災害伝承への関心があると答えたのはいずれも3割ほどであった。事後アンケートにおいては、約7割の生徒が、ジオサイトへの理解がある程度深まり、災害伝承への関心を持つことができた結果を得られた。しかし、岩石や浅間山への興味関心は3割ほどで一連の授業を通してもあまり変化がみられなかった。
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