抄録
本発表では1970年代に九州と沖縄で激しい環境運動を展開した2人の人物、松下竜一と安里清信を取り上げて、彼らの環境主義がローカルな文脈からどのように生み出され、どのような普遍的な意義と可能性を有するのか検討することを目的とする。分析の結果、松下竜一が唱えた「環境権」の思想はローカルな日常生活の現場から生産力至上主義を批判する視点であること、一方、安里清信の「生存権」の思想は生存基盤としての自然にしっかりと根を張って生きること、その生存基盤を破壊から守ることにほかならないことが明らかとなった。このような松下と安里の環境主義の思想を比較検討した結果、松下の「環境権」の思想をより実存的な次元へと深化させたものとして安里の「生存権」の思想をとらえうることが明らかとなった。