日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P016
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発表要旨
気候変動によるアジアーアフリカ乾燥地帯への影響 その(2)
*立入 郁
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抄録

北アフリカから中東、中央アジアを経てモンゴルに至る地域は世界最大の乾燥地帯であり、人々の多くは気象条件への依存性の強い乾燥地農業や牧畜を生業としている。このような地域において、温暖化による気候変化がもたらす気温・降水量などの変化は、耕作・牧畜適性に影響を与え、生活の基盤を脅かす重大な問題である。

IPCCの第五次評価報告書などによれば、気候モデルの平均値では、今世紀最後の20年間を1986–2005年と比べた場合、シナリオによらず北米大陸南部〜南米大陸北部、アフリカ南部、地中海周辺で乾燥化が進み、北アフリカ〜モンゴルの乾燥地では、カスピ海周辺を除いて、横ばいあるいは若干の湿潤化が予測されている。

 低位安定(RCP2.6)および高位安定シナリオ(RCP8.5)については昨年度報告に続き、今回は中位シナリオ(RCP4.5とRCP6.0)についてみてみる。MIROC-ESM(Watanabe et al., 2011)のRCP4.5およびRCP6.0実験(2006-2100)を解析対象とし、解析の際は、まず月平均から年平均値を計算し、時間(年)に対する線形回帰式の傾きを算出する(3メンバーのアンサンブル平均を使用)。

 まず、気温については、当然であるが、RCP2.6, 8.5の間の昇温量となっており、RCP6.0>RCP4.5となっている。また、対象地域の北東部の昇温が顕著である。降水量についてもRCP2.6, RCP8.5の間の変化ではあるが、RCP4.5とRCP6.0の違いはさほど顕著ではない。LAI(葉面積指数)においても、降水量の傾向によく似た結果となっている。すわなち、RCP4.5、RCP6.0ともRCP2.6, RCP8.5の間の変化ではあるが、RCP4.5とRCP6.0の違いはあまり顕著ではなかった。

発表では、他のモデル・変数についても言及するとともに、バイアス補正の影響に注目し、補正済みデータについての解析例も示す。

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