主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2019年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2019/09/21 - 2019/09/23
本研究では,国立社会保障・人口問題研究所「第8回人口移動調査」から得られる出生地分布の変化から,東京圏一極集中の継続の可能性について検証した。総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」による東京圏の1980〜2015年の移動数の変化を人口構造要因とモビリティ要因に分解すると,転入数はもっぱら人口構造要因によって減少しているのに対して,転出数は主にモビリティ要因によって減少していた。本研究ではとくに後者の転出モビリティの低下に着目し,その要因について「人口移動調査」から得られる出生地分布の変化の観点から解明を試みた。
世帯主の子ども(別居子を含む)のなかから東京圏出生者を対象とし,その親に相当する世帯主と配偶者の出生地分布をみると,25〜29歳以下のコーホートにおいて両親とも東京圏出生の割合が高まっており,調査対象者の出生地分布の変化にやや遅れて親世代の出生地分布も変化していることが明らかとなった。続いて,同じく東京圏出生者を対象として,親の出生地別,年齢別に現住地が非大都市圏である人の割合をみると,両親とも非東京圏出生の場合,25〜29歳以上において本人が非東京圏に居住する割合が概ね1/4を超えているのに対して,両親とも東京圏出生の場合はどの年齢層でも概ね1〜2%にとどまっていた。
すなわち東京圏出生者に加え,親世代も東京圏出生者である人の割合が増加しており,そのような属性を持つ人々は非東京圏への転出モビリティが低いことを示唆している。したがって,今後も転出モビリティの低下を通じて,東京圏一極集中が継続する可能性は高いと考えられる。