日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P017
会議情報

発表要旨
ミャンマーにおける19世紀末以降の日降水量データを用いた過去125年間の降水量変動
*井上 知栄松本 淳久保田 尚之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1. はじめに

 モンスーンアジア地域における20世紀初頭からの気候要素の変動については、デジタル化されたデータが少ないことから、限られた国での解析にとどまっている。そのため我々の研究グループでは、旧英領インドの国における日降水量データのデジタル化を進めている。本研究では、新たにデジタル化したデータを利用して、ミャンマーにおける1891~2015年の日降水量地上観測データを解析し、過去125年間の降水量の変化傾向について調べた。

2. 資料

 1961~2015年の日降水量データは、ミャンマー気象水文局(DMH)より入手した。1891~1956年の日降水量データは、米国NOAA Central Library で公開されている旧英領インド時代の"Daily Rainfall of India"などのスキャン画像を基として、インド熱帯気象研究所(IITM)・インド気象局(IMD)・英国気象局(UKMO)の現地にて冊子原本とのデータ照合作業を行い、データベースにしたものを使用した。今回は対象期間で利用可能なデータの年数が比較的よく揃っている28地点を解析対象とした。

3. 結果

 19世紀末~20世紀前半と20世紀後半~21世紀初頭の各47年間における年降水量を比較すると、エーヤワディー川下流の地点などで増加する一方、北西部で大きく減少しており、複雑な空間パターンを示す。また年最大日降水量は増加した地域が多く、特に北緯15度以南では20 %以上増加している。
 次に各地点について降水量の季節進行の年代間比較を行った。北緯16~20度に位置するミャンマー中南部(北緯16~20度)の地域では、第33~39半旬(6月10日~7月14日)の期間で降水量が増加し、第40~43半旬(7月15日~8月3日)の期間では減少している。すなわち、雨季のピーク時期が近年ではやや前倒しして現れやすい傾向があることが確認された。それぞれの期間における降水量変化率の分布を確認した結果、北緯20度より北の地点では逆の変化傾向を示しており、北進する季節内振動のタイミングなどの影響が年代によって異なっていた可能性があることが示唆された。

著者関連情報
© 2019 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top