抄録
渥美半島から天竜川河口までの遠州灘西部沿岸に分布する海成・河成段丘面を対象に,段丘面の詳細な分類・対比を広域的に行い,特に最終間氷期(MIS5e)に形成された段丘面の形状や旧汀線高度分布に基づいて,この地域に生じた地殻変動の隆起様式・変形様式を検討した。その結果,遠州灘西部沿岸には天伯原南東部を中心に渥美半島から三方原南部全域に及ぶENE方向を長軸とする背斜状隆起が生じていることが示された。従来知られていたよりも隆起帯が東に延びることが示されたが,隆起は天竜川付近までしか及ばないと見られる。近年,西南日本外帯の海岸部における隆起の要因として指摘される西南日本弧外縁撓曲とは分布が調和せず,遠州灘西部沿岸の背斜状隆起は,大陸棚の幅よりも短波長な変形である可能性が指摘できる。