抄録
伊豆半島・天城山南東部の白田川支流・川久保川沿いには,3面に大別できる段丘地形が発達し,その上流域には大規模な地すべり移動体が存在する.段丘地形や地すべり地形の発達史を明らかにするため,筆者らは地形判読と現地での地形・地質踏査を行った.段丘面の形成には,上流の地すべり滑動に伴う土砂供給との関連がある可能性が高い.中位のM面は構成層の層相から,土石流性の堆積段丘であると考えられる.19 kaに噴出した火山砕屑物に覆われ,直線的な投影縦断面の延長は河口から数100 mの地点で現海水面以低になる.ゆえにM面は,最終氷期後半の低海面期に上流の地すべり滑動で生産された土砂が中〜下流部の谷を埋積し,その後離水し段丘化したと考えられる.下位のL面はさらに数段に細分できる段丘面群であり,M面と同様の構成層を持つ.M面の形成後の海水面の上昇,土砂供給量の低下,降水量の増加に伴う下刻によりM面を侵食した侵食段丘であると考えられる.