日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P075
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発表要旨
バングラデシュロヒンギャ難民キャンプ地帯における地下水資源と水利用
*杉江 あい日下部 尚徳海津 正倫
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抄録

バングラデシュの最南端に位置するテクナフ半島では,地形・地質条件により,安全な水の持続的な確保が困難となっている。2017年8月25日以降には,67万人以上のロヒンギャ難民が当地域に流入し,安全な水の需要と稀少性はさらに高まっている。テクナフ半島の中でも,ウキヤ郡(upazila)やテクナフ郡北部では,表層の比較的近くに帯水層が分布しているのに対し,テクナフ郡中部では褶曲・断層や水が透過しにくい地層の分布によって帯水層が形成されにくい構造となっており,地下水資源開発に適した帯水層の存在はほとんど認められていない。そのため,テクナフ郡中部では水不足が深刻であり,この問題はロヒンギャ難民と地元住民の間に軋轢を引き起こしている。そこで,本発表はこの地域を対象として,これまで明らかにされている地下水をめぐる地形・地質条件と,人口や土地利用,また難民支援の一環として調査されている水利用状況をGISを用いて分析し,地下水資源の利用可能性が見込める地点や水不足が最も深刻な地域を特定し,水不足緩和に向けて今後どのような調査・研究が必要かを検討する。また,2019年2~3月に,この検討を踏まえて現地調査を実施し,2017年のロヒンギャ難民流入前とそれ以降でどのように水利用が変化したのかを,地元住民や難民からの聞き取りによって明らかにする予定である。本発表では,この調査結果についても触れたいと考えている。

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