日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S807
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発表要旨
「共生型ケア」の普及をめぐる現状と課題
国および自治体による政策の影響に着目して
*久木元 美琴
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抄録
本研究では,高齢者・子ども・障害児(者)といった対象領域を横断したケアのあり方として注目される「共生型ケア」の現状と課題を検討した。共生型ケアは,1980年代以降,民間主体によって草の根的に開始された「宅老所」運動から出発し,都道府県など自治体の独自事業の支援を経て,国事業として政策化された。佐賀県でも自治体独自事業として共生型ケアを推進してきたが,多様な対象を同じ空間でケアするという理念を現場レベルで広く実践することには課題が残されている。特に,介護保険事業で運営基盤を安定化させてきた事業者にとっては,共生型ケアの導入により介護保険の基準に抵触するのではないかという「漠然とした不安」のほか,対象ごとに異なるケアが求められるケア従事者の負担,対象別の制度をまたぐ特例などの知識や推進へのスタンスには自治体や担当部署で差があり,事業所側の心理的・手続き的負担が大きい。これらの問題は,国事業の進展による担当部署の明確化や理念共有を通じ一部改善される可能性がある一方,共生型ケアの理念に沿った指導・監督の在り方やソフト面での支援が求められる。
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© 2019 公益社団法人 日本地理学会
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