日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S203
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発表要旨
地理総合で防災がどのように扱われるか
(第2部趣旨説明)
*久保 純子
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抄録
新指導要領における「自然環境と防災」
 次期『高等学校学習指導要領解説 地理歴史編』(文部科学省2018)では、「地理総合」の大項目は
A「地図や地理情報システムで捉える現代世界」、
B「国際理解と国際協力」、
C「持続可能な地域づくりと私たち」
からなり、「自然環境と防災」はCの(1)に位置づけられている。また、内容は
ア「知識・技能を身につける」、
イ「思考力,判断力,表現力等を身に付ける」
という目標順に示されている。
 具体的には、ア「知識・技能」として、
() 我が国をはじめ世界で見られる自然災害や生徒の生活圏で見られる自然災害を基に,(中略)自然災害の規模や頻度,地域性を踏まえた備えや対応の重要性などについて理解すること。
() 様々な自然災害に対応したハザードマップや新旧地形図をはじめとする各種の地理情報について,その情報を収集し,読み取り,まとめる地理的技能を身に付けること。
とある。(ア)では世界と日本で見られる自然災害の事例を学び、変動帯としての特色やモンスーンの影響などから、世界の中でも日本は自然災害に遭いやすい条件にあることを学べばいいだろう。「生徒の生活圏」で見られる自然災害の事例では、小地形など身近な自然条件だけでなく、土地利用や開発の歴史と災害の関係を学ぶことが必要であろう。
 このように、自然災害は人間活動と自然との関わりから発生するということや、世界・日本・生徒の生活圏で、地域の自然環境や社会の特色と災害の関係を学ぶことが重要であり、また、「自然災害への備えや対応」には、過去にもこのような地域の自然条件や社会条件を踏まえてきた事例(伝統的な対策など)を学ぶことや、今後の対策においても地域の特色をふまえることが重要であろう。
 そして、(イ)の地理的技能として、ハザードマップと新旧地形図をはじめとする各種地理情報を比較することが求められている。
 また、イ「思考力、判断力、表現力等」として、
()地域性を踏まえた防災について,(中略)主題を設定し,自然災害への備えや対応などを多面的・多角的に考察し,表現すること。
とある。これは、身近な地域などを例に、自然環境だけではなく社会的条件や開発の歴史なども考慮して、その地域で想定される災害とその対策を考察し、自分たちの住む地域をどうすればいいかを考えよう、ということであろう。

シンポジウム第2部の趣旨
 日本地理学会災害対応委員会では、これまで地理学の立場から防災に貢献するため活動してきた。本シンポジウム第2部では、災害対応委員会メンバーがそれぞれの立場から「自然環境と防災」に関して講演し、それをもとに議論を行う。
 南雲直子会員(土木研究所)は国内・海外での地形分類図作成と災害調査の経験から、ハザードマップについて取り上げる。
 岡谷隆基会員(国土地理院)は、文部科学省での経験もふまえ、国土地理院の高校地理教育への取り組みを紹介する。
 須貝俊彦会員(東京大)は、自然地理学の研究・教育の立場から、「自然環境と防災」の教育について講演する。
 村山良之会員(山形大)は、教員養成系学部における防災教育の実践や課題を講演する。
 長尾朋子会員(東京女学館)は、地形や災害調査の経験もふまえ、高校教員の立場から「自然環境と防災」について講演する。
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© 2019 公益社団法人 日本地理学会
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