日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P060
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発表要旨
沿岸流による礫浜堆積物の粒径と円形度の空間的変化
-伊豆半島大瀬崎の事例-
*髙瀬 南歩青木 久
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キーワード: 沿岸流, , 粒径, 円形度, 野外実験
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抄録
1.はじめに
 静岡県沼津市大瀬崎は,駿河湾に突き出た伊豆半島北西に位置する岬である.礫によって構成された長さ約0.5 kmの鉤状砂嘴が北方に向かって発達しており,南部には連続した海食崖が見られる.海食崖の前面には礫浜が発達しており,この礫浜は砂嘴と連続している.砂嘴は,一般に沿岸流の卓越する海岸で発達することから,大瀬崎では暴浪時に発生する沿岸流によって海浜の礫が北に向かって運搬・堆積することにより,砂嘴が形成・成長していると考えられる.
 礫の大きさや形を示す定量的指標に粒径と円形度がある.大瀬崎における現地観察によると,砂嘴の先端(北端)と,付け根付近における礫浜堆積物の粒径は大きく異なる.北に行くほど,粒径が小さくなるという傾向が見られた.また,海食崖の前面の礫浜上には崖から供給されたと思われる角ばった礫がしばしば観察され,丸みを帯びた礫で構成される砂嘴上の礫浜とは様子が異なっている.
 そこで本研究では,沿岸流が卓越すると考えられる大瀬崎の礫浜において,沿岸流による礫の粒径と円形度の空間的変化を定量的に明らかにすることを目的とする.さらに,礫に見立てたレンガを礫浜上に置き,レンガの移動量と形状の変化を追跡・観察するという野外実験を行ったので,その結果も併せて報告する.

2.調査方法
 野外調査では,大瀬崎の礫浜において,背後に海食崖がある礫浜(地点1),砂嘴の付け根付近の礫浜(地点2),砂嘴の先端付近の礫浜(地点3)の3地点を調査地点として設定した.各地点の測線上において方形枠を複数設け,礫浜上部から写真撮影し,画像解析によって礫の粒径(D)と円形度(C)を求めた.野外実験では,2018年8月8日に地点2の礫浜上に汀線に対して直交方向に一列に,一定の形状(23 cm×11 cm×6 cm)をもつレンガを複数配置し,9月17日と11月21日に,レンガの移動,およびDCの変化の追跡調査を実施した.

3.結果・考察
 野外調査より,大瀬崎の礫浜は,砂嘴の先端に近い地点ほど,Dは小さく,Cが大きい(丸い)礫で構成されていることがわかった.また,野外実験より,レンガは沿岸流による移動距離(L)が長いほど,摩耗もしくは破砕により,Dは小さくなり,Cが大きくなることがわかった.これは野外調査で求めた礫の空間的変化の傾向と一致する.すなわち大瀬崎の礫は,沿岸流によって摩耗と破砕が起こり,DCを変化させながら北に移動していると推察される.
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© 2019 公益社団法人 日本地理学会
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