抄録
近年,リモートセンシング機器を用いた都市境界層の観測が盛んになってきたが,既存の研究は都市内1箇所の定点観測がほとんどである.その中で,森本ほか(2013)のシーロメーターやPal et al.(2012)のライダーによる移動観測が注目されるが,彼らの観測は風の鉛直構造を把握できなかった.我々はドップラーライダー(以降,DL)による都市境界層高度だけではなく風の鉛直分布を含む移動観測を立案し,埼玉県熊谷市街地内外において実践してきた.DLによる移動観測の障害となる振動は高性能防振マットにより軽減できるが,機器の方位や傾斜の変動の防止は不可能であるため何らかの補正手法の開発が急務であった.この度,走査型DL測定値に対する傾斜補正手法を提案し,その精度についての検証観測を実施したので,その結果の概要を報告する.