日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P071
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発表要旨
「北極域」地図から読み取れる地形
*吉岡 美紀
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キーワード: 地図, 北極域, 地形, 深海域
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抄録
「北極域」地図は、北極域で各分野の研究をおこなう際に利用しやすい地図を提供するために作製され、国立極地研究所のホームページで公開されている。

  https://www.nipr.ac.jp/aerc/map.html

 この地図は、北極点を中心とするポーラーステレオ図法を用い、NOAAから公開されている緯度1分(約1.8km)の解像度の標高・水深データセットであるETOPO1を使用して描いた地図に、氷河分布情報等を追加している。地名については、作製時点で国内での北極環境研究に必要と思われたものを主として記載し、日本と北極域との位置関係を容易につかむため、下部に日本が入る範囲で作図されている。
 この地図は、世界地図等を描く際に一般に多く使用され目にすることの多いメルカトル図法とくらべると、北極を挟んでユーラシア大陸と北米大陸が向かい合って描かれている点や、高緯度ほど面積が広がってしまうメルカトル図法とは逆に低緯度側の面積が拡大している点が異なり、国内で発行されている地図帳の標高・水深の配色に近い色使いとなっていることで、描かれている地域を新鮮な角度から眺めることができる。なお、水深データについては未だ情報量が少なく、実際の海底地形を描写できているのではないと指摘されている。

 地形読み取りでまず目につくのは、北米大陸西岸からユーラシア大陸東岸がおおまかには直線的であること、北極海深海の出入口はグリーンランド北東とスバールバル諸島の間の海峡であること。深海のおおまかな地形からは、アリューシャン列島、カムチャツカ半島と千島列島、サハリンと日本列島による弧が連続し、弧の内側の深海域の位置、形状が相似していること。更に北極海深海域の形も相似していること。陸上の地形では、カナダ内陸部の山地と低地の間に氷河によると推測される台地状の地形が多くあること、カムチャツカ半島付け根の放射状高まりの西側に細長い高地があること、オビ川上流西側に筋状の高まりがあること等々、興味深い地形が読み取れる。
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© 2019 公益社団法人 日本地理学会
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