日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S702
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発表要旨
隣接学会のアウトリーチ活動から学ぶ
*植木 岳雪
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抄録

1.はじめに

 アウトリーチとは,手を差し伸べる(reach out)という意味で,もともと福祉分野で使われていた用語であり, 2000年前後からは,科学のアウトリーチとして,研究者自身が国民一般に対して行う双方向的なコミュニケーション活動を指すようになり,研究成果の社会への還元のために推進されるようになった.アウトリーチ活動は,大きな大学や研究所では特別な組織によって行われるが,一般には研究者個人に委ねられている.一方,研究者の集団である学会でも,専門分野の認知,普及啓発,存在意義,社会的合意形成などのために,“組織として”アウトリーチ活動を行う必要があると思われる.本発表では,隣接学会のアウトリーチ活動を紹介し,ジオパークの支援のほかに,日本地理学会ができるアウトリーチ活動と今後の方向性について議論したい.

2.日本第四紀学会の例

 日本第四紀学会では,現在,領域5「現在社会に関わる第四紀学」が組織としてアウトリーチ活動を行っており,ジオパークに関する公開シンポジウムを毎年1回開催している. かつては教育・アウトリーチ委員会という組織があり,大会に合わせて普及イベントなどを行った.また,科研費の研究公開促進費を取得して,一般講演会や巡検を行なった.学会のスケールが小さく,小回りがきくメリットはあるが,これらの活動は一部の会員に依存し,内容の偏りや持続性に問題がある.

3.日本地質学会の例

 日本地質学会では,広報部会と社会貢献部会が組織としてアウトリーチ活動を行っており,写真コンテストを毎年開催している.5月10日を「地質の日」として博物館等のイベントを促進したり,「県の石」を制定している.特筆すべきは,毎年の大会に合わせて全国を巡る普及イベント「地質情報展」であり,産業技術総合研究所(もと地質調査所)と共同で開催している.日本地震学会,日本火山学会と共同で「地震火山こどもサマースクール」を開催している.また,各地方の支部で普及講演会や巡検を開催する場合もある.学会のスケールメリットを生かして,国の研究所や他学会と連携している点が特徴である.

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