日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 112
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発表要旨
ジオパークのコンセプトはどう図示されてきたか?
*河本 大地
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抄録

Ⅰ.はじめに

本研究の目的は,ジオパークのコンセプトがどのように図示されてきたかを明らかにすることである。

まず,ジオパークの定義,およびジオパークのコンセプトの図示に関する,問題の所在を整理する。主として,ジオパークに深く関係する,ユネスコ(国際連合教育科学文化機関),世界ジオパークネットワーク,日本ジオパーク委員会,日本ジオパークネットワークによる定義や説明を比較検討する。

次に,海外においてジオパークのコンセプトがどう図示されてきたかをみる。対象は学術論文,および日本以外のユネスコ世界ジオパークのウェブサイトである。続いて,日本に関して,ジオパークのコンセプトがどう図示されてきたかをみる。対象は学術論文,および日本ジオパーク(日本にあるユネスコ世界ジオパークを含む)のウェブサイトである。最後に全体のまとめと考察を行う。

Ⅱ.問題の所在

ジオパークの定義について,日本ジオパーク委員会は公式ウェブサイトにおいて,「ジオパークは、地質学的重要性を有するサイトや景観が、保護・教育・持続可能な開発が一体となった概念によって管理された、単一の、統合された地理的領域です」と説明している。この表現は,ユネスコによるユネスコ世界ジオパークの定義とほぼ同一であり,違いは「地質学的重要性」の前に「国際的な」がないことのみである。このウェブサイトにはそのうえで,「日本ジオパーク委員会は、ユネスコ世界ジオパークの基準に沿って日本におけるジオパークの審査、ユネスコへの推薦を行っています」と記され,「ユネスコ世界ジオパークの基準」が8つ列挙されている。しかし,ユネスコ,世界ジオパークネットワーク,日本ジオパーク委員会のウェブサイトに,ジオパークのコンセプトを示す図はない。

一方,日本ジオパークネットワークはウェブサイトで,「ジオパークとは、『地球・大地(ジオ:Geo)』と『公園(パーク:Park)』とを組み合わせた言葉で、『大地の公園』を意味し、地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所をいいます」等と説明し,図1のコンセプトマップを掲載している。ユネスコ等の定義とは重点の置き方も異なる。

図1 日本ジオパークネットワークがウェブサイトで図示しているジオパークのコンセプト

ジオパークのコンセプトには,多様な地域資源を含む様々な要素が関係している。また,それらの見方,見せ方や,持続可能な開発という言葉にみられるようなあり方が問われている。こうした複雑な内容は,文章や文字だけでは伝わりにくいと考えられる。この点で,ジオパークのコンセプトは,「見えにくい情報」を「わかりやすい形」に表現するインフォグラフィックス(木村,2010)と親和性がある。また,ジオパークのコンセプトを図示・図解することで,関係者がジオパークとして大事にしたい内容を整理・省察し,今後の活動につなげることもできる。

ジオパークのコンセプトの図示には,地域多様性という概念を整理しようとした発表者の図2などを含め,様々な研究者や組織が取り組んできた。しかし,代案となる図を提示しないままの批判も存在する。「図には図を」の精神で多様な事例を検討した成果の一端を示したい。

図2 「地域多様性」と地表圏の3 種の多様性(左)

図3 地表圏における人間の暮らしと自然基盤の関係(右)

(いずれも河本,2011を一部改変。ここでは図表を1枚しかアップロードできないようなので割愛。)

引用文献

木村博之 2010. 『インフォグラフィックス—情報をデザインする視点と表現—』誠文堂新光社.

河本大地 2011. ジオツーリズムと地理学発「地域多様性」概念—「ジオ」の視点を持続的地域社会づくりに生かすために—.地学雑誌,120-5, 775-785.

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© 2020 公益社団法人 日本地理学会
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