Ⅰ はじめに
福島県,宮城県を流下する阿武隈川の支流には,電気伝導度(EC)が高い地点があり,生活雑排水の混入や田畑への施肥による影響を受けたものと考えられている(山形ら,2020).本研究では,支流の水質と土地利用の関係および水質組成の分析結果を報告する.
Ⅱ 研究方法
2019年10月から2020年7月にかけて月一回,計10回の現地調査を行った.調査地点は本流支流を合わせ計61地点(一部欠測含む)であり,現地では気温,水温,比色pH,比色RpH,ECを測定した.
Ⅲ 結果と考察
主な支流では,亀田川,逢瀬川,東根川でECが高く,変動係数も大きかった(図1).反対にECが低い支流は,摺上川,内川,雉子尾川であり,変動係数も小さかった.流域の土地利用割合と比較したところ,右岸の支流のECは,土地利用割合のうち建物用地,田,その他の農用地の割合を足したものと正の相関がみられた.建物用地,田,その他の農用地以外は森林の割合が多くを占めるため,これは同時にECと森林割合との負の相関も示している.左岸ではECと土地利用との相関は見い出せないものの,森林の割合が高い支流でECが低かった.
右岸の支流の水質組成は,東根川を除きCa-HCO3型で,典型的な日本の河川水に分類された(図2).東根川はNa-Cl型で,寄与因子は不明である.左岸の支流ではCa-SO4型およびCa-HCO3型が多く,一部Na-Cl型を示し,特に陰イオンに差があった.左岸には奥羽山脈が連なり,荒川や松川など火山に水源をもつ河川がCa-SO4型に分類された.高ECを示す2河川がNa-Cl型に含まれ,これは生活雑排水等からのNaClの混入によるものと考えられるが,同じNa-Cl型に低ECを示す摺上川が分類されている.摺上川流域は森林面積が流域の約9割を占め,上流には摺上川ダムとその下流に温泉街があることが特徴であるが,水質形成要因は今後検討が必要である.
Ⅳ おわりに
水質と土地利用の関係が右岸の支流で明確に示されたが,今回の比較では流域面積や地質は考慮されていない.それらもふまえて水質特性を解明することが今後の課題である.