日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P166
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発表要旨
2018 年新燃岳噴火以後の霧島火山周辺の水質の変化(3)
*北原 舜太小寺 浩二浅見 和希
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抄録

Ⅰ はじめに

宮崎県および鹿児島県の県境に位置する霧島火山では、近年活発な火山活動が続いており、2011年、2017年に新燃岳、2018年に新燃岳や硫黄山で噴火が発生している。2018年の硫黄山の噴火後には深刻な水質汚濁が発生したため、周辺の市町村では取水できなくなり、稲作が断念されるなど、農業にも大きな被害を与えた(内閣府,2018)。このように火山活動が水環境に与える影響は大きく、自然環境だけでなく、人間の生活にも大きく影響を及ぼす。近年各地で火山活動が活発化している中、火山防災の計画を立てていくなかで、火山活動による水環境の変化の把握は非常に重要である。

本研究では新燃岳や硫黄山を中心にした霧島火山周辺を調査地域とし、2018年新燃岳噴火後から、河川の水質に与えた影響や状況を捉えることを試みる。

Ⅱ 研究方法

新燃岳、硫黄山を中心とした霧島火山で、2018年3月から2019年9月まで河川を中心とした水質調査を実施。現地では測器を用いて観測を行い、調査項目はAT、WT、EC、pH、RpHである。採水したサンプルは、研究室にてTOCの分析と主要溶存成分、ヒ素値の分析を行っている。

Ⅲ 調査結果と考察

2019年4月噴火時から2019年3月調査時まで、硫黄山周辺に源流を持つ赤子川や長江川上流では、pHは3.5以下の低値、ECはほぼ毎回、800μS/cm以上の高値を観測していた。また、長江川下流や、さらに下流に位置する川内川でも、噴火当初は低pH、高ECを観測するなど噴火の影響を受けた。ヒ素値に関しても噴火当初から赤子川や、長江川、さらに下流の川内川でも環境基準値を上回っており、その後も赤子川や長江川ではヒ素値が環境基準値を下回らずにいた。赤子川や長江川上流の水質組成からもSO42-やCl-の割合が多いことからも硫黄山の火山活動の影響を強く受けていることが分かる。その後、2019年の6月調査時以降は赤子川や長江川上流でも、pHやECの大幅な上昇、低下が見られ、ヒ素値も環境基準値を下回り、SO42-やCl-も減少していた。これは、2019年の5月に水質の改善を図る為、宮崎県が実施した水路の工事や2019年の4月以降徐々に火山活動が弱まっている事などが考えられる。

一方、新燃岳周辺の河川では噴火や火山活動による、大きな水質の変化は見られていない。低pH値、高EC値の地点もいくつかあるが、いずれも温泉地の地点である。霧島火山周辺の多くの河川の水質組成はSO42-、HCO3-などが多く、水質成因は火山活動の作用によるものが多いことが分かった。

Ⅳ おわりに

今後は霧島火山に存在する温泉と河川水の相関を把握するなどして、さらに霧島火山の水環境を明らかにしていくのとともに、硫黄山の火山活動による水環境の変化を把握していく必要がある。

参 考 文 献

内閣府(2018):霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)の火山活動の状況等について.

気象庁(2019):霧島山の火山活動解説資料(平成30年3月〜令和元年9月).

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