1.研究目的
近年アニメなどを愛好するオタクと呼ばれる人々が増加しており,アニメ関連商業も拡大している。アニメ関連商業集積地の研究として東京・秋葉原を対象とした牛垣ほか(2016)などの研究があるが,これらの研究は地域の形成過程や変化などを見たものであり,重要な分析視点の一つである取扱商品に関する詳細かつ定量的な分析はない。また大都市郊外や地方都市といった集積規模が比較的小さい地域に目を向けた研究も見られない。そこで本研究では日本国内のアニメ関連商業集積の規模の実態や集積の特徴,及びその集積規模と取扱商品の関係の特徴を明らかにする。
2.研究方法
まず全国に展開する主にアニメ関連商品を取扱う大手チェーン店舗を対象に,日本国内のアニメ関連商業集積が見られる地域とその規模を市区町村別に把握し,他業種との比較などからアニメ関連商業の日本全体の集積の特徴をみる。次に秋葉原及び東京郊外に位置する大宮,川越,立川,町田,横浜(以下,郊外核地域と総称する)におけるアニメ関連商業集積地の店舗での現地調査により,取扱商品を把握し,集積の規模と取扱商品の関連をみる。
3.結果
①アニメ関連商業は狭い範囲に集中する同業種型商業集積の傾向が強く,同一建物に店舗が集まる事が多い。またアニメ関連商業の規模は大都市圏に集中している一方,地方は小規模程度に存在するのみであり,三大都市圏の間でも集積の規模や分布傾向は異なる。
②アニメ関連商業は他業種と比較し,上位層と下位層で集積量の差が大きく,特に高次の買回り品と類似している。
③郊外核地域は全国チェーンのみであり,秋葉原と比較して取扱商品種は書籍や映像・音楽が多く,取扱作品は女性向け及び最近の作品が多い。そのため郊外核地域の店舗へ足を運ぶのは,最近の作品の主要視聴者である若い年齢層が中心であると考えられる。しかし秋葉原を全国チェーンのみで見ると,郊外核地域と同様の傾向となっており,取扱商品の差異は経営形態の影響が大きいといえる。また秋葉原は郊外核地域と比較して,女性向け作品の取扱割合が小さく,男性向け作品に偏っている。理論上では中心性が増すと財の種類数は増加するとされるが,アニメ関連商業において対象の幅広さは集積の大きさと逆転している。
④郊外核地域間での取扱商品の比較より,5地域を男性型,一般型,女性型にタイプ分けした。大宮は男性向け作品が多く,2011〜2015年の作品が多い男性型,川越は一般向けの古い作品の商品,特にフィギュアが多い一般型,町田は女性向けの直近の作品が多く,女性のオタクが好む缶バッジなどのグッズが多い女性型に分類できる。また立川と横浜はこれらの地域と比較すると目立つ特徴はないものの,横浜は一般向けの古い作品の商品,特にフィギュアが比較的多いことから一般型に近く,立川は人気の男性向けアニメが集中している年代である2011〜2015年の作品が多いことから男性型に近いといえる。
⑤アニメ関連商品を取扱う大手チェーン間では商品構成が異なっており,チェーンの有無が郊外核地域間の違いに影響している。また同チェーンの中でも地域間で商品構成が異なる場合があり,店舗自体の規模や同地域の競合店舗,地域に訪れる人の属性が影響していると考えられる。