主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2020年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/29
1. はじめに
2018年告示の高等学校学習指導要領では,「地理総合」が新設された.「地理総合」は,持続可能な社会づくりを学ぶ科目として,ESDへの取組みが一層重視される.しかし「持続可能な開発という概念が学習者および教員に理解されないまま,授業で実践されている可能性がある」(阪上 2016).つまり,持続可能な社会づくりを視野に入れた地理学習では,持続可能な開発の考え方を学習内容として扱う必要がある.本発表では,持続可能な開発の考え方を学ぶ地理学習の開発およびその実践の流れ(学習活動),結果と課題を報告するものである.
2. 授業の概要
開発した授業は,3年生向けで地理Bの単元「現代世界の諸課題」(28時間)および地理Aの単元「日本の自然環境をベースとした地域調査」(19時間)の中に位置づけ,2020年1月に実施した.なお持続可能な開発を学ぶ学習を,地理Bでは2時間,地理Aでは1時間かけて実践した.
また,本授業では持続可能な開発の考え方を獲得させる際に,図1「持続可能性のトライアングル」を用いた(トライアングルの詳細は阪上・川端 2018を参照).
3. 授業の流れ,結果と課題
授業の流れ(学習活動)は,①持続可能な社会という状態の確認(持続可能なトライアングルの概要;環境・社会・経済のバランス),②各班でこれまでの学習で調べた現代的諸課題の確認とその解決策の提案,③持続可能なトライアングルを用いて,解決策が対象地域に将来与えるであろう正負の影響の記述,④③で記述した内容を踏まえた解決策の評価,⑤④の評価を踏まえた解決策の改善あるいは代替案の提案,であった.なお地理Aでは1時間で実施したため,学習活動は④までにとどめた.
持続可能なトライアングルを用いることで,持続可能な状態を視覚的に捉えていた生徒が多かった.また影響の記述(学習活動③)に関してはどの班もできていたが(図2),書き出された影響の数は,班が選択した現代諸課題や解決策によって差がみられた.
文献
阪上弘彬 2016. ESDの視点を入れた地理カリキュラム・学習の構造と特質—ドイツ・ニーダーザクセン州ギムナジウムを事例に—.E-journal GEO11,401-414.
阪上弘彬・川端光昭 2018. 高等専門学校における地理と土木とが連携したモビリティ・マネジメント教育の意義—単元「持続可能な街づくり」の開発・実践—.E-journal GEO13,549-559.
本研究はJSPS科研費JP17K14038の成果の一部である.