主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2020年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/29
Ⅰ.目的と背景
本研究の目的は,日本の農村地域(多自然地域,中山間地域,農山漁村地域)における学校教育の在り方を,ESD(持続可能な開発のための教育)の視点から整理して示すことである。
地域に人の暮らしの営みが存在し続けるために必要なもののひとつに,学校教育がある。ところが,日本の多くの農村地域では(市街地の一部でもそうであるが),児童・生徒数の減少に伴う統廃合によって新たな学校を設けても,また児童・生徒数が減少して次なる統廃合が実施される事態を経験してきた。学校の統廃合は加速化している。文部科学省は2015年に「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」を策定し,各教育委員会に通知した。繰り返される学校統廃合の先にあるのは,地域の周縁化であり,究極的には人が暮らし続ける空間としての地域の「死」である。そしてそれは,日本における地域多様性の喪失でもある。未来を拓く方途を描き出したい。
Ⅱ.方法
本研究では,農村地域における学校教育の在り方について,島しょ・山間地域を中心に長年にわたる組織的な動きが存在している「へき地教育」を中心に検討する。
まず,1954年に制定されたへき地教育振興法制定の直後と近年とで,へき地教育をめぐる状況が大きく変化していることを示す。そのうえで,学校教育においてESDを実践展開する拠点とされるユネスコスクールとへき地学校との関係を確認する。さらに,近年のへき地教育を対象とした,全へき連の「第8次長期5か年研究推進計画」(2014〜2018年度)におけるESD関連記述とESDとの関わりを把握する。
続いて,ESD の視点からへき地教育を捉えなおすことによって社会にどんな可能性が開かれうるのか,そのためには何が必要かを議論する。その手段としてまず,全へき連が2018年に出した「第9次長期5か年研究推進計画」(2019〜2023年度)におけるESD関連記述を把握する。その後,ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)および「ESD for 2030」における5つの優先行動分野とへき地教育との関係を検討する。学校訪問等によって得られた事例も参照する。
Ⅲ.結果と考察
結果の概要は図1のとおりである。詳細は当日報告する。
河本大地(2020):ESDでみるへき地教育の在り方.日本教育大学協会研究年報,38(印刷中).
付記
本研究の一部には,公益財団法人国土地理協会の2018年度学術研究助成を用いました。