主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2021年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2021/09/18 - 2021/09/20
地球規模における気候変動による水環境への影響は,日本の湖沼の水温環境の変化にも影響を及ぼしている。例えば,日本最大の湖,琵琶湖(滋賀県)では,毎年冬に湖底の水が入れ替わる循環が生じるが,2018年末から2019年はじめ,2019年末から2020年はじめにかけての記録的な暖冬により,2019年・2020年には,最深部では循環が生じず,大規模な貧酸素水塊が形成され,部分循環のような状態となった。水文環境において気候変動の影響を最も強く受けるのは水温と凍結であり,諏訪湖(長野県)では,湖面に一部盛り上がった氷堤が見られる現象「御神渡り」の発生頻度が,1980年代末頃から減少傾向にあることで多くの研究が進められている。
池田湖(鹿児島県)では,かつて冬季に全循環する湖沼であったが,冬季の気温上昇等により,1981年から全層循環が確認されなくなり熱帯湖の特徴が顕著になっている。また,北海道のいくつかの湖では,温暖化による気温上昇が湖の熱容量の増加に寄与することで,全面結氷に至らない年があり,気候変動に伴う冬季における鉛直循環不順による水温成層の形成や深水層の水環境への影響について解明が急がれている。そこで,本発表では,湖沼の循環形態の変遷について議論する。