日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S404
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発表要旨
「地理総合」・「地理探究」の具体像
*中嶋 則夫
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抄録

高等学校新学習指導要領については,令和4年度から年次進行で実施される。今次の改訂によって,地理歴史科では,必履修科目として「歴史総合」とともに「地理総合」が,また,地理領域の選択科目として「地理探究」がそれぞれ設定されることとなった。ここでは,「地理総合」,「地理探究」の科目としての特性と主な内容等について,その概要を確認したい。

「地理総合」は,持続可能な社会づくりを目指し,環境条件と人間の営みとの関わりに着目して現代の地理的な諸課題を考察することに加え,グローバルな視座から国際理解や国際協力の在り方を,地域的な視座から防災などの諸課題への対応を考察すること,地図や地理情報システムなどを用いて汎用的で実践的な地理的技能を習得することを科目の主要な特徴として構成されている。

「地理探究」は,「地理総合」の学習を前提に,地理の学びを一層深め,生徒一人一人が「生涯にわたって探究を深める」その端緒となるよう,系統地理的学習,地誌的学習を行う各大項目の学習によって地理学の体系や成果を踏まえた上で,最後に科目のまとめとして我が国の地理的な諸課題を探究する大項目を設けて構成されている。

「地理総合」,「地理探究」の授業をつくるうえでは,学びの過程を重視し,「主体的で対話的な深い学び」の実現に向けた授業改善を推進する必要がある。その指導においては,「社会的事象の地理的な見方・考え方」に基づく学習活動の充実と,「主題」や「問い」を中心に構成する学習の展開が必要であり,このことを踏まえた授業づくりが求められる。

なお,今次の改訂では,各教科等の目標及び内容が資質・能力の三つの柱で再整理され,学習指導要領には,「地理総合」,「地理探究」の中項目ごとに育成を目指す資質・能力が示されている。授業づくりにおいては,各中項目の目標について十分に確認したうえで,目標の実現に向けて,地理的な見方・考え方を働かせる学習活動が展開できるよう,「主題」や「問い」を中心に授業をデザインすることが大切である。

「地理総合」,「地理探究」の項目の構成

「地理総合」

A 地図や地理情報システムで捉える現代世界  

(1) 地図や地理情報システムと現代世界

B 国際理解と国際協力            

(1) 生活文化の多様性と国際理解

(2) 地球的課題と国際協力

C 持続可能な地域づくりと私たち       

(1) 自然環境と防災

(2) 生活圏の調査と地域の展望     

「地理探究」

A 現代世界の系統地理的考察         

(1) 自然環境         

(2) 資源,産業

(3) 交通・通信,観光

(4) 人口,都市・村落

(5) 生活文化,民族・宗教

B 現代世界の地誌的考察           

(1) 現代世界の地域区分

(2) 現代世界の諸地域

C 現代世界におけるこれからの日本の国土像  

(1) 持続可能な国土像の探究

A,B,C:大項目  (1),(2)等:中項目

【参考文献】文部科学省(2019)「高等学校学習

指導要領(平成30年告示)解説地理歴史編」

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