日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 417
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発表要旨
福島県師範学校附属小学校が作成した 国民科国史・地理「郷土の観察」の授業計画
*初澤 敏生
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抄録

国民科は1941年の国民学校令によって設立された国民学校に置かれた教科の一つで、修身、国語、国史、地理の各科目から成る。また、国史・地理の基礎的な位置づけとして「鄕土の觀察」が4年生に課されることになった。文部省(1942)は、「鄕土の觀察」の指導にあたって、(1)事象を実際に観察し、考察、処理する態度に導くこと、(2)事象を関係的に観察するように導くこと、(3)作業を重視すること、(4)児童心身の発達に即応して程度を考慮すること、(5)国防に関する指導に考慮すること、(6)他科目・他教科と密接なる連絡のもとに指導すること、を求めている。また、これを実現するために「兒童用書を編纂しない」こととし、実地観察による授業を求めている。そのため、教師用書においても全国一律の内容を定めることはできず、「最も基準となるべき觀察事項」として、「展望」「學校」「山・川・海など」「氣候」「産業」「交通」「村や町」「神社と寺院」「史跡」が例示されているにとどまる。

「鄕土の觀察」は上記のような特徴を持つため、各地で独特な授業計画が作成された。廣島高等師範學校附屬國民学校國史・地理研究部(1942)は各地の20師範学校附属国民学校が作成した授業計画などをまとめている。しかし、「鄕土の觀察」に関する先行研究は少ない。報告者は福島県師範学校附属小学校が作成した「鄕土の觀察」の授業計画などを入手することができた。(以下、「福島師範附属計画」と略す)この計画は広島高等師範学校附属国民学校が作成した書籍にも掲載されておらず、管見の限り、先行研究でも取り上げられていない。本報告では福島師範附属計画に関する研究の第一報として、その概要について報告する。

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