依然存在するハンセン病への偏見、差別や、今日のCOVID-19感染拡大で明らかになった感染症患者への差別をなくしていくためには、ハンセン病元患者が生きてきた場所と日常の追体験に近い問題の理解が向く可能性があると考えられる。この追体験は、各地の国立ハンセン病療養所に併設された資料館等の見学や入所者の著述等にふれることでも可能であるが、歴史や著述にはそれが起きた空間、環境との関係が明確に認識されることでより当該状況の理解が助けられる面があると考える。
本研究は、そのようなハンセン病の理解を支える資料に国立ハンセン病療養所の地誌学的記述はなり得ると推論し、これを試みるものである。ただし、ハンセン病療養所には多様な問題が複合的に内在するため、ここでは事例として国立療養所松丘保養園と災害の関連に着目し、災害を中心的視点として地誌学的研究、記述を行う。