本稿では、若者のライフコースと富山への居住理由、そこに地域の産業教育がどのように関わっているかを明らかにする。分析に用いたデータは2021年4月に実施した富山県に居住する若者へのアンケート調査である。高校以降のライフコース(進学、就職、転職など)、受けてきたキャリア教育、最終学歴の進路指導などについて質問している。ここから、ライフコースを描くことでトランジションの空間的パターンを把握し、それに教育などがどのように関わっているかを把握する。
ライフコースの空間的な大まかなパターンは、地元への定着性が高いことが示された。高卒就業者のほとんどは、富山県内の企業に就職する。また、大学進学では、一旦、富山県外に転出した後、初職で富山に戻ってくるパターンであった。多くが就職の際に富山県での勤務を前提としていた。初職以降は県内での異動が多い。これらの理由は富山の居住環境の良さや、富山への愛着などである。 最終学歴の教育については、医療・福祉などスキルが必要な業種ほど評価されている。最終学歴時の就職指導については、業種により差がみられた。進路指導に関して,学校の影響は大きいが,就職先企業を推薦したり、面接指導など技能面以外の部分が中心である.