日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 345
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パラリンピックを契機とした地方におけるバリアフリーなまちづくり
東京2020大会における共生社会ホストタウン
*成瀬 厚
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抄録

スポーツの国際大会において,出場選手は地理的環境の異なる場での競技パフォーマンスを高めるために事前合宿を行う。東京2020五輪大会では,政府が事前合宿の場を全国から募り,ホストタウン政策を実施した。共生社会ホストタウンはパラリンピック選手の事前合宿を受け入れるもので,競技施設や宿泊施設,また交流事業を行う公共施設などのバリアフリー化が事業計画に含まれる。

日本の障害者政策には2006年のバリアフリー新法があるが,東京2020大会は施設整備を推し進める契機として期待された。共生社会ホストタウンの事業計画には,地方自治体にとって福祉のまちづくりの推進への期待が読み取れる。全105の登録自治体の事業計画を整理すると,直接パラリンピックに言及するものよりも当該自治体の福祉政策を反映しているものが多い。スポーツ施設だけでなく,教育施設や交通インフラ,観光施設,防災関係の計画も少なくない。ソフト面ではバリアフリーマップや啓発用パンフレットの作成,障害者関連条例に関する記述などもある。

自治体のウェブサイトでは事前合宿の様子が報告されているが,具体的な施設整備の状況は確認できない。そこで,自治体の予算書から五輪関連予算の内訳を確認した。4市の事例から,施設整備とその財源,地方都市におけるスポーツ・イベントの存在,ツーリズムとの関連と新型コロナウイルス感染症対策,オリンピックを契機としたまちづくり計画の加速化が明らかにされた。諸施設のバリアフリー化の詳細や,政府の財政支援の詳細については明らかにできなかった。

ホストタウン政策を通じて全国に分配しようとした五輪大会の効果は限定的なものとなったが,各自治体の取り組みは福祉のまちづくりをある程度推進したといえよう。

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