日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S403
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ロシア・トムスク地域における2000年以降の土地被覆変化
*中山 大地舘野 水希KHROMYKH VadimKHROMYKH Oksana
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抄録

1 はじめに

現在,西シベリアのトムスク市周辺では20世紀半ば以降の産業・農業活動の活発化や交通機関の建設,都市・農村地域の拡⼤などによってジオシステムが⼈為的変化にさらされている.Khromykh (2015)は,トムスク市周辺のトミ川の氾濫原におけるジオシステムの自然および人為的な動態の要因を考察し,人為的な要因が重なって地下水位が低下したことにより,ジオシステムが乾燥化してきていると述べている.以上のことから,本研究ではロシア・トムスク地域の土地被覆が⼈為的・⾃然的要因によってどのように変化してきたかを衛星画像から判別することを⽬的とした.

2 データと分析手法

Google Earth Engine(以下GEEと表記)を用いて衛星画像からトムスク地域の地表面被覆の変化を求めた.使用したデータは2000年から2020年までの20年間にLandsat5号,7号,8号により取得された対象地域の衛星画像(約900枚)と,SRTMにより取得されたDEM(約20mメッシュ)である.これらの衛星画像のうち地表面反射率のプロダクトを使用して正規化植生指標(NDVI),正規化水指標(NDWI),正規化積雪指標(NDSnowI),正規化土壌指標(NDSoilI)の4種類の指標を計算した.これらの指標は暖候期(4月1日から9月30日)と寒候期(10月1日から翌3月31日)に分けて計算し,2000年代(2000年から2002年),2010年代(2010年から2012年),2020年代(2020年から2021年)においてそれぞれ寒候期と暖候期の最大値のコンポジットを作成した.また,SRTMからは7種類の地形特徴量(傾斜量,Plan Curvature,Profile Curvature,流域面積,Topographic Flatness,Sediment Transport Index,Wetness Index)を計算した.

Khromykh et al. (2018)による2000年頃の土地条件データを用いて教師データを作成した.このデータには植生・地形・土壌・人工改変の度合いなどを組み合わせた112カテゴリの項目があり,対象地域近辺の5147ポリゴンが格納されている.ポリゴンを衛星画像の解像度に合わせてラスタ化し,教師データとした(図1d).

2000年代の暖候期・寒候期における4種類の指標NDVI,NDWI,NDSnowI,NDSoilIの最大値コンポジットとSRTMから作成した7種類の地形特徴量をスタックし,教師データのあるピクセルから10000ピクセルをランダムサンプリングしてトレーニングデータとした.このデータを用いてランダムフォレストによる分類器を作成した.分類器の分類精度は0.87,Kappa係数は0.86であり,良好な結果となった(図1e).この分類器を用いて2010年代と2020年代の衛星画像を分類し,地表面被覆分類の変化を求めた(図1f, g).

3 2000年以降の土地利用変化

2000年からの20年間で人為的な変化が起きていることが明らかになった.特に,2010年代までの10年間は人為的な影響による土地被覆の変化が大きく,2010年代から2020年代までの10年間は土地被覆の変化はありつつも,2000年代からの10年間に比べて人為による変化は小さかった.

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© 2022 公益社団法人 日本地理学会
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