日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 446
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大都市圏郊外地域の類型の変遷とその要因
―関西大都市圏を事例として―
*曹 奕
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抄録

1.はじめに

日本の郊外開発は「自給自足、職住近接」の田園都市構想に対して、中心都市への鉄道通勤を前提として行われたものが多いため、中心都市に依存する立場にあった。1910年の室町住宅地(現・池田市)の開発をはじめ、高度経済成長期にいたるまで大規模な郊外住宅地やニュータウンが開発されてきた。当初はベッドタウンとして開発された郊外では、人口と産業が集積し、小売業やサービス業の機能も増加した。このような分散的都市化が進むことは、郊外の自立化傾向だと考えられる(富田2004)。しかし人口減少・高齢化が進む中で、これらの変化が同時進行する地域と、人口は集積するものの高齢化がみられない地域とがあり、郊外地域の多様化・分極化が進んだ。 都心回帰や「コンパクトシティ」推進の大環境の中で、大都市圏において一部の郊外は切り捨てられていく可能性が考えられる。数多い郊外地域の中、それぞれどのような性格を持ち、過去数十年にわたってどのような変化が起きていて、どのような将来がみえてくるのか、本研究では郊外地域の類型化を行い、郊外地域の類型の変化パターンから一般性を検討する。

2.研究対象と方法

本研究においては、京都市・大阪市・堺市・神戸市を中心都市とし、これらに対する通勤・通学10%圏に含まれる97市町村を関西大都市圏の郊外地域と定義した。 郊外地域の性格と類型構造を把握するため、人口動態・財政・労働・産業等のカテゴリーを中心に12変数を指標として採用した。変化を検討するため、1995年・2005年・2015年等の3時点のデータを収集し、分析を行った。具体的には、因子分析で変数を集約し、クラスター分析で類型化を行った。また、各時点の郊外地域の類型構造を潜在変数とし、因子分析の結果を用いて構造方程式(PLS-SEM)を用いた。

3.結果と考察

分析の結果、郊外の中の多様化、あるいは分極化が起こっていると考えられた。そこでは、同じ変化パターンを示す地域が多くみられ、ある程度の一般性が考えられる。そして最も問題視されている地域は、中心都市から遠い最外縁部に位置していた。また、PLS-SEMの結果からみると、3時点の地域類型の間に因果関係は存在し、そして、2005年から2015年への影響度は、1995年から2005年への影響度より強かった。

4.おわりに

同じ関西大都市圏内の郊外地域であっても、「郊外核」となる傾向がある地域や、問題が生じている地域など、全く性格が異なる地域がみられた。人口規模や土地利用の多様性はこのような分極化現象の要因と考えられた。

【参考文献】

富田和暁2004.三大都市圏における地域変容.杉浦芳夫編『シリーズ人文地理学6 空間の経済地理』80-105.朝倉書店.

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