日本地理学会発表要旨集
2023年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 536
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夜間光(VNP46A2)データを用いたCOVID-19パンデミックの社会経済的影響の地理的分析
*東城 文柄
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抄録

2020年1月以降、未曽有のパンデミックとなった新型コロナウィルス(COVID-19)によって、特に2020年から2年以上の間、世界中で都市封鎖等の社会活動および人流の大規模な制約が実施され、世界各地で甚大な社会経的変化が生じた。2023年5月にWHOにより「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了が宣言されたものの、COVID-19パンデミックによりもたらされた社会経済的影響の大小とそこからの回復速度には、地理的な差異が少なからずあると推測される。例えば遠隔地や地方都市、都市外縁部など、従来から社会経済的脆弱性の高い地域ほど、パンデミックの負の影響を大きく受けてそこからの回復も低調になっている可能性がある。本研究では、この社会経済的影響の地理的差異を定量的かつ空間的に詳細に分析するために、S-NPP衛星のVIIRSセンサで観測されているVNP46A2日別月光補正済み夜間光(Daily Moonlight-adjusted Nighttime Lights)データを用いた。近年夜間光は、全球のエネルギー消費、交通、社会的交流、重要なインフラの機能、災害の影響、国・地域の経済活動状況などのモニタリングを迅速に行うという観点から注目されている。

本研究では2019001 – 2022365(4年間)の期間で、日本及び南アジア地域(6シーン)の計8,368枚の夜間光画像のDLをhttps://ladsweb.modaps.eosdis.nasa.gov/(LAADS DAAC)から実施した。そのうえで、年単位の夜間光中央値画像をシーンごとに生成し、夜間光の空間変動をパンデミック前(2019)、パンデミック中(2020-21)、パンデミック回復期(2022)の3時期で比較可能とした。分析における前処理から画像に含まれる欠損値(処理漏れの雲ノイズや高緯度帯の周期的欠損等)を加味した中央値の算出に至るまでのデータ処理全般は、統計プログラミング言語Rを用いて行った。

結果図1に見られるように、パンデミック回復期(2022年)に入っても日本の首都圏の主要な繁華街(31地点)の社会経済的回復が鈍かった可能性が示唆された。このように夜間光を用いた分析を行うことで、最新の統計や地域状況の入手が難しい途上国・遠隔地域(例.南アジア)に関しても、また日本のような経済的な発展段階が進んだ国・地域に対しても、社会経済的の地域差を空間的に高解像度にモニタリング出来る可能性があることが提示された。

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