石灰岩の溶食速度は,石灰岩が分布する地域や岩質により異なり,また同一の地域においても地形や水分条件の影響を受けて,場所ごとに溶食速度は異なる.この溶食速度の差異がカルスト地形を形成する上で重要な要因と考えられる.そこで本研究では沖縄島本部半島山里のカルスト地域を対象に,地上1.5 mとコックピットの土層中で,石灰岩の野外風化実験を行い,溶食の空間的差異を明らかにすることを試みた.実験では,琉球列島に分布する4種の石灰岩を加工したタブレット型の試料を用いた.これらタブレット試料を空中1地点(地上1.5 m)とコックピット内の複数地点(土層中)に設置し,タブレットの重量変化から溶食量を測定した.土層内の埋設地点は,コックピット縁辺部3地点と中央部1地点とした.これらの地点では地中50 cmにタブレットを埋設し,中央部のみ地中1 mにも埋設した.実験開始から486日間の地点別の溶食率(4種の石灰岩の平均値)を計測した結果,コックピット縁辺部(北東地点)に埋設したタブレット試料で最も溶食が進み,次いで中央部の地中1 m,縁辺部(北西地点),縁辺部(南地点),中央部の地中50 cmの順で溶食が進行した.そして地上1.5 mに設置したタブレット試料が,最も溶食率が少ないという結果が得られた.