日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P033
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神城断層地震震災アーカイブと連携した看板の設置について
*横山 俊一内山 琴絵廣内 大助
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抄録

白馬・小谷両村と信州大学は神城断層地震の災害の記録を後世に残すとともに、発災後の復興過程も含めた「2014年神城断層地震震災アーカイブ」の構築を行っている。これは住民の防災意識を高めるとともに、震災の記憶と記録を後世に受け継いでいくことを目的として、2017年度から信州大学と白馬・小谷両村との共同研究事業として取り組んでいるものである。 神城断層地震震災アーカイブは単に収蔵するだけでなく、写真データには可能なかぎり位置情報を付加し、活用の幅を広げるようにしているとともに、現地での見学にプラスになるように震災遺構の残る箇所や観光客の回遊する地点に看板の設置を行った。看板は震災アーカイブと連動しており、看板から容易にWebデータへアクセスできるようにしており、現地で発災直後の様子を知ることができる。  震災遺構近くに設置した看板は、通常の看板とは異なり、看板内容の変更が比較的容易にできるとともに、地域で維持管理できる仕様とした。これにより新たな研究成果等を随時修正することができるとともに、地域で発信したい内容等を入れることが容易になる。また、看板の多くは道路脇に設置していることから、雪崩や冬季の除雪作業の影響を受けやすい。そこで住民の意見を取り入れ、冬季は取り外して地域で保管できるようにしたところ、地域の看板との認識も醸成されつつある。 看板を通じてアーカイブを地域で活用してもらうために白馬村で初めた取り組みの一つに、2021年度より開始した「アーカイブサポーターズ養成講座」がある。これは白馬村公民館講座と連携し,山麓めぐりガイドの方々に,アーカイブサポーターズ養成講座を実施。アーカイブの利活用や語り部の育成など,震災の経験や記憶を村民自らが引き継いでいくための仕組みづくりである。2022年度にはアーカイブサポーターズが、アーカイブと看板を利用して村内小学校の防災授業や、村外の防災関係団体のガイド活動を行った。 神城断層地震震災アーカイブ看板は、通常の案内・説明版としての利用だけでなく、公民館講座での人材育成や学校教育、村民向けテレビ番組作成での利用を行いながら進めており、2021年度より白馬村と協働で育成しているアーカイブサポーターズによる、村外市民へのガイド活動にも使われている。 今後さらにアーカイブの周知と活用を行っていくとともに、地元企業との連携にも発展させていくことを目指している。

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