Ⅰ はじめに
最上川は,山形県を流下する,幹川流路長約229 km(全国第7位),流域面積約7,040 km2(同9位)の一級河川である.当流域について,河川水質を明らかにする目的で行った調査の結果を報告する。
Ⅱ 研究方法
2022年3月から11月まで月1回現地調査を行った.調査地点は本流(m01~06, 08~17)支流(t01~37)を合わせ計53地点であり,現地では気温,水温,比色pH,比色RpH,電気伝導度(EC)を測定し,採水を行った.6月は現地でパックテストによる化学的酸素要求量(COD)を測定し,大学の研究室で全有機炭素(TOC)を測定した。
Ⅲ 結果と考察
調査結果より,最上川流域全体の水質の傾向が分かった. 本流のECは,95~134 µS/cmの間で推移した(図1).特に,上流部のm03およびm04で132と134 µS/cmと高い値を示し,m09で95 µS/cmまで低下したのち中流部のm10で120 µS/cmと再び上昇した.これは合流する水質に影響するもので,上流部ではECの高い支流,羽黒川,天王川,鬼面川,吉野川(t01~04)の流入により,本流のECが上昇し,一旦ECの低い支流が合流によりECは低下するが,中流部で須川(t19)が合流し、再度ECが上昇する.
さらにCODは,逆川(t17),吉野川(t04),犬川(t05),が4 mg/Lを超え,TOC(図2)では,逆川(t17),最上川(m09),須川(t11),酢川(t13)が3 mg/Lを超え高かったことから,これらの地点では汚濁負荷があると考えられる。しかしながら,犬川(t05)および最上川(m09)はECが100 µS/cm未満 であり,汚濁の質が他の地点と異なる可能性がある。
ECは高いが,CODおよびTOCが低い蔵王川は,pH3.5前後であり,汚濁はなく,温泉の混入によりECが高いと考えられる。酢川(t13)もpHが2.5前後で,温泉成分が主であると考えていたが,TOCが高かった結果については,要因を探る必要がある。
Ⅳ おわりに
今回,最上川流域の河川水質を,調査結果から汚濁負荷の観点から概観した。今後,各イオン成分の分析を進め,他の項目間の関係性を究明し,流域の水質形成要因および水収支を明らかにしていく予定である.