日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P009
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自然災害伝承碑データとその分析事例
*研川 英征宮下 妙香山中 崇希森 今日子大田 寛之
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抄録

1.はじめに

国土地理院では,市区町村等と連携して自然災害伝承碑の整備を進めており,2019年6月より国土地理院のウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)に掲載を開始し,2020年8月には地理院地図に掲載されている情報を自然災害伝承碑データとして国土地理院のウェブページ(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi_datainfo.html)からダウンロード提供を開始した.また,2021年11月から「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)でも掲載を開始した.合計掲載数は2022年12月8日現在で全国509市区町村1736基となる.

自然災害伝承碑データには,①ID,②碑名,③建立年,④所在地,⑤災害名,⑥災害種別,⑦伝承内容,⑧自然災害伝承碑の位置座標(10進経度,緯度)が含まれており,災害名や建立年での検索,並べ替えなど,様々な活用が可能である.

本論では,自然災害伝承碑データの分析事例として,建立年による時系列分布のグラフ化,災害名による地理的分布の作図を行ったので,その結果について述べる.

2.建立年の時系列分布

自然災害伝承碑データの建立年に着目し,任意の時代を選び,年毎の基数でグラフ化すると,建立年の時系列分布を見ることができる.

とくに明治以降の建立数を見ると,例えば1896年明治三陸地震の直後である1897年,1923年関東大震災の直後である1924年及び1927年,1933年昭和三陸地震の直後である1935年,2011年東日本大震災の直後である2014年の建立数が多い.当該年におけるデータの内訳を見ると地震に関する碑が多く,そのうち1935年及び2014年は,津波に関する碑の割合も多く,それぞれの災害の影響であることが伺える.

3.災害毎の地理的分布

自然災害伝承碑データの災害名に着目しマッピングすると,災害毎にその地理的分布を見ることができる.明治三陸地震,昭和三陸地震及び東日本大震災では太平洋岸の同じ地域で繰り返し災害が発生していること,関東大震災では東京や神奈川だけでなく伊豆半島や房総半島のほか内陸の山梨県や埼玉県まで広域に分布していることが分かる.

4.まとめ

本検討によって, 自然災害伝承碑データの分析から災害毎に特徴的な分布があることなどが明らかとなった.これらのことは,我が国は数多くの自然災害に見舞われていること,そして先人が自然災害伝承碑を後世まで遺してくれていることの理解に繋がり,防災・地理教育などにおける活用可能性も期待される.

引き続き自然災害伝承碑の整備と公開を進めていき,地域の災害教訓の伝承に基づく防災・減災に寄与する取組を進めたい.

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