日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P045
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伊勢湾沿岸域の活構造-最終間氷期海成泥層上面を基準とする傾動運動認定と活動度評価-
-最終間氷期海成泥層上面を基準とする傾動運動認定と活動度評価-
*小松原 琢佐藤 善輝佐藤 智之
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抄録

1 はじめに

 伊勢湾周辺では広範囲にMIS 5eの海成泥層(最終間氷期海成泥層)が分布する。この泥層上面は,デルタ前面~プロデルタで形成された堆積性地形面と考えられ,初生的な起伏が小さく,沿岸活構造の活動度評価に良好な変位基準である。この面を基準として活構造の分布と変位速度を検討した。

2 最終間氷期海成泥層の分布

 伊勢湾沿岸には広範囲に,明褐色表土を伴い,海成泥層を挟有する堆積物によって構成される中位段丘(熱田面・碧海面など)が分布する。これらの面を詳細に検討すると,K-Tz起源の高温型石英を表土に含む高位の面(川名台地と仮称する)と,On-Pm-1やK-Tzを堆積物中に含む低位の面に分けられる。確実な地質データはないが,海成泥層は川名台地を構成する堆積物に含まれ,低位の面はこれを削剥した河成堆積物によって構成される。津市白子沖海底でこの海成泥層上位の砂層基底近くからOn-Pm-1由来のクリプトテフラが検出されている(天野ほか,原稿作成中)。

3 最終間氷期泥層の高度分布からみた伊勢湾周辺沿岸域の傾動運動認定と活構造の活動度評価

 海底音波探査と,露頭調査・ボーリングデータより上記海成泥層を追跡すること等の陸域地質調査を組み合わせることにより,①濃尾平野南部~伊勢湾周辺では全体として北ほど変位速度の大きな活構造が発達していること(石村,2013を追認),②西三河平野は後期更新世以降に東傾動している可能性が高いこと(森山,1996を追認),③知多半島南部は後期更新世以降に北東傾動していること,④知多半島中部東岸付近に伊勢湾断層と並走する活構造(常滑沖推定断層断層)の存在が想定されること,などの知見を得た。

文献

天野敦子ほか(原稿作成中)海陸シームレス地質情報集「伊勢湾沿岸域」産業技術総合研究所地質調査総合センター、2024年度出版。

石村大輔(2013)地学雑誌、122,448-471。

森山昭雄(1996)愛知教育大学地理学報告、82、1-11。

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