本研究では,果樹の晩霜害の多い長野県を対象として,晩霜害発生時の気象条件・地理的条件を明らかにすることを目的とし,今回は過去の晩霜害発生時の気象状況(2023年)について報告する.2023年4月の晩霜害の被害額は約23億円,被害自治体は16市11町11村に及び,晩霜害が生じたのは4月9日,10日,13日,18日,25日であった.このうち全県的に被害が生じた4月9日,10日の地上天気図をみると,直前に本州を前線が通過し,県内各地で降水がみられた.その後,一時的に西高東低の冬型となり寒気が流入した.さらに本州は移動性高気圧に広く覆われ放射冷却が進み,長野県内の広い範囲で最低気温が氷点下となった.一方,4月25日の場合には,県内で氷点下となった地域とならなかった地域があった.寒気の流入や滞留と県内地形条件とが関係していると考えられる.