Ⅰ はじめに
利根川は、新潟県と群馬県の境である三国山脈を源流に持ち太平洋及び東京湾に注ぐ一級河川である。流域面積は、16,840 km²と日本最大であり、首都圏の治水や環境、利水上大きな役割を持つ。赤谷(あかや)川は、三国山脈の一つである平標山(標高1984m)近傍に源流を持ち、群馬県利根郡みなかみ町下津付近で利根川に合流する。赤谷川の源流部は豊かな自然環境が残されており、国の機関や地域が連携して生物多様性の保全や復元が行われるなど、貴重な生態系を有していることが知られている1)。本稿では、源流域に貴重な生態系が残されている利根川支流赤谷川上流域を対象に、水質調査を実施し、河川水の基本的な水環境の把握を試みた結果を報告する。
Ⅱ 研究方法
まず初めに、公共データやGISを活用して流域環境情報を整理し2)、流域の特徴を整理するとともに、水系網の次数区分解析(ストレーラー法による)を行い、流域特性を把握した。次に、赤谷川流域において水質の現地観測を実施した(採水、AT、WT、比色 pH-RpH、EC)。現地観測は、2023年1月(上流域)、3月(上流域)、6月(流域全体)、10月(上流域)に実施した。6月の調査は身近な水環境の全国一斉調査3)に合わせて実施し、赤谷川流域全体で実施した。なお、水質調査地点は、流域全体の調査では3次流以上の河川とし、上流域の調査では2次流以上の河川から選定した。採水した水は濾過の上、溶存イオンの分析を行った。
Ⅲ 結果と考察
赤谷川流域における次数区分解析の結果、最大で4次流まで区分することができた。4次流に相当するのは、赤谷川、西川、須川川である。赤谷川本流の電気伝導度は80~100μS/㎝の範囲であり、上流部において高い値(120μS/㎝以上)がみられる場所があり、川沿いの温泉の影響などが考えられる。また、流域の地質構成をみると、赤谷川は流紋岩質や泥岩質が多く、西川は安山岩質や流紋岩質が多い。赤谷川では花崗岩質が見られるのが特徴的である。須川川では、安山岩や礫質が多い。今後は水質と地質の関係について詳細な検討を進めていく予定である。
参 考 文 献
1)茅野恒秀(2019):国有林における「資源化のダイナミズ
ム」の喪失と再生,国立歴史民俗博物館研究報告,第215集,pp176-196.
2)森本洋一・小寺浩二(2022):流域誌の作成を念頭に置いた流域環境情報の整理手法の一提案,2022年度春季地理学会発表要旨集.
3)身近な水環境の全国一斉調査ホームページ:https://www.japan-mizumap.org/