千葉県千葉市には、かつて遠浅の美しい稲毛海岸があった。多くの海水浴客で賑わい、海辺には保養所、旅館、別荘が立ち並び、現在でいうリゾート地を形成していた。しかし昭和30年代半ばから住宅地造成のために埋め立てが始まり、昭和40年代半ばには稲毛海岸は歴史を閉じ、海浜ニュータウンが建設された。しかし2014年から千葉市教育振興財団所管の千葉市民ギャラリー・いなげで開催されていた「いなげお話し会」の中で、現存している稲毛海岸の名残とも言える建物や景観などから八つの施設を「いなげ八景」として選定した。この「いなげ八景」で、かつての美しい稲毛の海の記憶を現在、そして後世に伝えたいと考えた。その「いなげ八景」の選定について紹介する。