都市の河川・水路などの水環境は、水質・水量・生物などの自然環境の維持・保全の対象としてだけでなく、親水空間として機能を有する都市河川もある。その一つである三島市の都市河川の水環境として水質・水量などを把握し、人々と水辺空間との関わりを有する“うつわ”として捉えた調査を行った。
結果は次のとおりである。各地点のうつわとしての川幅・水深は、2月より8月の流量が多いため基本水深は深くなるが、川幅は芝橋下流や蓮馨寺下など自然護岸などの傾斜護岸では水量が多い8月で広くなる傾向にある一方で、コンクリートや石垣などによる垂直護岸のいずみ橋下流や源兵衛橋下流などでは大きな差が生じず、その分流速がより速くなっている。比較的垂直護岸で可川幅に変化のある桜川では、水深と川幅および流速の関係は明瞭に表れない。なお、源兵衛川の水源でもある楽寿園内の小浜池は、2月は水が湛えられていない。しかし、工業用水の放水により最上流のいずみ橋の流量は0.143m3/秒で、最下流観測地点の源兵衛橋下流の流量は0.104m3/秒と約2/3にまで減少している。8月の小浜池は水が湛えられており、最上流のいずみ橋の流量は0.605m3/秒、最下流観測地点の源兵衛橋の流量は0.800m3/秒にまで増加している。いずみ橋から芝橋下流地点の流量は湧水池からの流入により0.067m3/秒増加し、気象ステーション上流地点からホタル看板前飛び石下流では0.126m3/秒と2月のホタル看板前飛び石下流での流量(0.129 m3/秒)と同程度の湧水の流入が認められる。一方、桜川と御殿川は源兵衛川より流量は少ないものの、湧水などによる流入割合が多い。源兵衛川の流速は2月の平均で0.120~0.369 m/秒、8月の平均で0.279~0.779 m/秒と地点による差異がある。芝橋下流から気象ステーション上流までの区間は、最大流速0.406~0.584 m/秒、平均流速でも0.212~0.257 m/秒と前後の地点の最大流速(それぞれ0.226 m/秒、0.328 m/秒)、平均流速(それぞれ0.12m/秒、0.146m/秒)より速い。このため、この区間での水の流れの速さを活かして浮き輪に乗って流れを楽しむなどの遊び方も見られる。逆に最大水深0.55m、最大流速0.779m/秒の蓮馨寺下や最大水深0.45m、最大流速0.588m/秒の聖徳太子堂階段上流は、水の中に入ることは大変危険な流速・水深となっている。桜川は比較的浅く流れが緩やかであり、御殿川は川幅の狭い区間が多く、水深は深くないものの流速が速くなっている。このため、白滝公園を含む桜川では川を歩く様子が見られる一方で、御殿川は梅花藻が水中に繁茂していることから、それを鑑賞する人はいるものの、川の中に入る人は見られず、川によって接し方にも差異が見られる。源兵衛川の冬季2月の水温・pH・ECは、それぞれ15.4~15.8℃、7.9~8.4、6.5~12.1mS/mとECの観測値幅はあるが、比較的一定している。一方、夏季8月は、16.2~17.0℃、7.5~7.7、12.8~16.8mS/mと水温に観測値幅はあるが、冬季同様に比較的一定している。水温は8月が高く、2月に低くなっているが、気温と比べるとその差は小さく、冬は気温より暖かく夏は冷たい。水遊びをする夏季の水温は17℃を大きく下回っておらず、さらに多くの子ども達が遊ぶ芝橋下流から看板前飛び石下流の区間の川幅は広く、最大水深は看板前飛び石下流で0.30mあるものの、他の2地点では0.15m、平均水深も0.08~0.14mと浅いことから、比較的安心して遊べる空間と言える。源兵衛川と桜川の水温分布を比較すると2月・8月ともに源兵衛川が低い傾向にあり、台地上の源兵衛川と台地下を流れる桜川・御殿川、楽寿園や白滝公園より北側で流れる桜川と南側で中心市街地に隣接して流れる源兵衛川と御殿川とでも地域的差異がある。