日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 717
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沖縄本島におけるコンビニエンスストアの立地展開
―那覇市を中心として―
*山崎 康平
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抄録

1. 研究の背景と目的

 既存のコンビニエンスストア(以下コンビニ)の立地展開に関する研究は、大手チェーンが市場を寡占している地域の事例が中心であり、後発のチェーンによる店舗展開を分析した研究はあまり見られない。そこで、2019年にセブン・イレブンが初出店を行った沖縄県に着目する。同年代に出店された青森県や四国と比較しても急速なペースで店舗展開が行われた沖縄県では、以前ローカルチェーンとナショナルチェーンとの間で激しい競合が行われたことがあり、加えて周りを海に囲まれているという点でもコンビニ立地において独自の特異性を持った地域であると考えられる。

 本研究では、ファミリーマートとローソンという二つのナショナルチェーンが県内のコンビニ市場を形成していた沖縄本島において、後発チェーンでありながら2019年の初出店から今日に至るまで急速な店舗展開を行っているセブン・イレブンの立地展開を分析し、沖縄の地域性がコンビニの出店にどのような影響を及ぼしているのか明らかにすることを目的とする。

2. 分析方法

 本研究ではコンビニの立地分析において荒木(1994)、松山・遠藤・中村(2016)が提示した、人口規模や交通条件から検討する外部条件と、配送センターの立地と流通、企業毎の経営戦略から検討する内部条件の両面から分析を行う。

3. 沖縄の地域性がコンビニの立地に及ぼす影響

 対象地域におけるコンビニの立地特性としては、中心市街地から3km以内の地点に店舗が多く立地しており、外部条件に関してはいずれのチェーンも人口、商圏環境、主要道路において、おおむね似た傾向の店舗展開がみられた。

 対象地域におけるセブン・イレブンの立地の特異性としては次の3点が指摘できる。第1に、那覇市を中心とした本島南部への集中出店がある。セブン・イレブンの出店傾向の1つである人口集中地域への店舗展開は沖縄県でも同様に確認された。那覇市や浦添市、糸満市など人口が多い都市が集中している本島南部への出店は、ドミナント方式による物流効率の向上のみならず、地域におけるチェーンの知名度の向上にもつながる。また店舗数が増加するにつれて、徐々に本島北部にも出店が進んでいる。第2に、主要道路沿いへの集中的な出店である。県内には普通鉄道が存在しないため、基本的に車が主な移動手段となっている。そのため駐車場を有する店舗が多く、那覇市内であっても主要道路沿いに立地している店舗割合が高い。第3に、沖縄の離島という地域性の影響である。2023年の調査時点で、セブン・イレブンは浦添市にある県内唯一の配送センターから本島の全店舗へ配送を行っている。仮に災害等でここからの物流が停止してしまった場合、他県の配送センターから商品を運ぶことができない。これはセブン・イレブンが沖縄に進出する際の課題の一つでもあった。一つの共同配送センターで県全体の店舗の物流をカバーしている一方で、それゆえに出店範囲が限定されているということも考えられる。

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