日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P036
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最上川流域の水環境に関する研究(3)
*山形 えり奈小寺 浩二
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抄録

Ⅰ はじめに

 最上川は,山形県を流下する,幹川流路長約229 km(全国第7位),流域面積約7,040 km2(同9位)の一級河川である.当流域について,河川水質を明らかにする目的で行った調査の結果を報告する.

Ⅱ 研究方法

 2022年3月から2023年7月まで約月1回の現地調査を行った.調査地点は本流(m01~06, 08~17)支流(t01~37)を合わせ計53地点であり,現地では気温,水温,比色pH,比色RpH,電気伝導度(EC)を測定し,採水を行った.2022年9月のサンプルは,イオンクロマトグラフィによる主要溶存成分分析を行った.

Ⅲ 結果と考察

 調査結果より,最上川は上流部で硝酸イオンが急激に増加することがわかった(図1)。硝酸濃度はm01で0.23 mg/Lであったが、m03で大きく増加し1.52 mg/Lであった。その後m06で0.72 mg/Lまで減少し、m13までは濃度の大きな変化はなく、m14からは再び増加し、最下流のm17で1.83 mg/Lの濃度であった。m01-m02間およびm02-m03間の増加率が高く(順に269.6%、78.8%)、この地域、つまり米沢盆地での硝酸イオンの流入が認められた。硝酸イオンは流域の土地利用割合との相関関係から人為起源と推察される。

 一方、硫酸イオンは最上流部のm01で17.28 mg/Lと高値を示し、流下に伴いm09まで減少し、m10で17.92 mg/ Lまで再び増加する。その後また、減少して最下流のm17では12.52 mg/Lであった。硝酸イオンとは異なり、硫酸イオンはm09-m10間での、つまり山形盆地での増加率が89.6%と高い。この硫酸イオンは支流のt19から供給され、さらにt19に硫酸イオンを供給しているのは、硫酸イオンが卓越しているt12およびt13であることが溶存成分分析によりわかった(図2)。t12やt13の硫酸イオンは、硫黄鉱山や蔵王温泉起源と考えられ、火山性と推察される。

 したがって、米沢盆地では本流に人為起源の硝酸イオンの供給があり、山形盆地では火山起源の硫酸イオンの供給があることが明確となった。

Ⅳ おわりに

 今回,最上川流域について,硝酸イオンおよび硫酸イオンに着目して河川水質を明らかにした。今後さらに,流域の水質形成要因が明らかになることが望まれる.

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