日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P020
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福島県いわき市の塩ノ平断層,井戸沢断層,湯ノ岳断層における滝の後退量から推定する過去の活動
*金子 朋紀小荒井 衛
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抄録

1.はじめに 2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震は福島県浜通りを震源とするM7.0で福島県いわき市,古殿町,中島村,茨城県鉾田市で最大震度6弱を観測した地震であった.この地震ではいわき市南東部に塩ノ平断層,井戸沢断層,湯ノ岳断層の3本の断層が正断層型の地表地震断層が出現した.このうち塩ノ平断層の北西延長と湯ノ岳断層の南東延長では活断層図において活断層として認定されていなかった地点でも変状が見られた.これらの地表地震断層崖は地震後約10年経過した時点で,運動の中心部では8割以上の比高が残存している地点が多いが,辺縁部の断層崖はおよそ4~5割程度が失われており,より長時間が経過している過去の断層運動の地形的痕跡は失われてしまったものと考える.本発表では,これらの断層の過去の活動を推定するために,Hayakawa and Matsukura(2003)で導出された滝の後退量を求める式を用いて断層運動によって滝が形成された年代を推定した.2.研究手法 岩盤の圧縮強度を測定するために,シュミットハンマーを用いて測定を行った.今回は滝を硬さの異なる岩質ごとにセクション分けして測定を行った.3.滝の後退 塩ノ平断層北方延長で地表地震断層が出現した地点では清道川と交差しており,滝が形成されていた.この地点では破砕帯の存在が認められ,滝は形成位置から5.9m後退している.この滝は過去の断層運動によって形成されたものだと推定でき,この地点で岩石の圧縮強度等の測定を行った.また,他2本の断層に関しても断層線と河川との交差点において破砕帯と滝を認め同様に測定を行った.4.滝の形成年代 Hayakawa and Matsukura (2003)で導出された式から,滝の幅・高さおよび構成岩石の圧縮強度はそれぞれ現地調査における実測値を用いた.上流の流域面積は地理院地図から,年平均降水量は気象庁が公開している近傍の上遠野の32年間分のデータを平均化して使用した.塩ノ平断層の滝における滝の形成年代はおよそ74.3年前という結果が得られた.湯ノ岳断層では55.1年という結果が得られた.井戸沢断層は現在検討中である.これらの結果は先行研究で示された値とオーダーは同じため,無効な値ではないと考えられるが,今後再検討が必要なものであると考えている.

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