日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P061
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政府統計を活用した将来の空き家分布予測手法の開発と空き家予測マップの公開
*秋山 祐樹水谷 昂太郎馬塲 弘樹
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抄録

近年,日本全国で空き家が増加し続けている。そこで,2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され,空き家の分布状況の把握が自治体の努力義務として定められた。また,2023年12月には同法が改正され,特定空家の予備軍となる「管理不全空き家」が新たに設定され,特定空家化する前に行政による改善の指導や勧告を行うなどの予防的措置を講じれるようになった.このように,空き家問題への関心は近年ますます高まりつつあり,現状の空き家分布の状況把握に資する研究も数多く見られる(Sayuda et al, 2021;水澤ほか,2022など)。一方,空き家の将来分布予測はこれまで著者らによる複数の自治体へのヒアリングの結果,高い需要があることが分かっているものの,現時点でその手法はほとんど確立されていない.そこで,著者らは日本全国同一の基準でオープンデータとして整備・更新され続けている政府統計(国勢調査,住宅・土地統計調査)を用いて,これらをAI(機械学習)により解析することで,日本全国の自治体の現在と将来の空き家率を推定する技術を開発している(秋山・水谷,2023)。本稿では秋山・水谷(2023)から発展した内容を紹介するとともに,研究成果を社会実装するための環境整備についても紹介する内容である.本研究では国勢調査から得られる市区町村ごとの様々な変数を説明変数,住宅・土地統計調査から得られる市区町村ごと空き家率(空き家数のうち,自治体での対応が必要になることが予想される「その他の住宅」の数を住宅総数で除した値)を目的変数とすることで,日本全国の市区町村の将来の空き家率を最長で2038年まで予測する手法を開発した。予測は機械学習モデル(LightGBMを用いた回帰予測モデル)を用いて行った。その結果,予測精度,外挿精度ともに高い汎用性に優れたモデルが実現した。また,本研究の成果は産官学民で幅広く活用されることで,日本の空き家対策の促進・加速を狙っている。そこで本研究の成果を社会に広く公開・普及するための環境整備として,図1に示すWeb GISを開発し,2023年7月より「空き家予測マップ」として本格的に公開を開始した。誰でも無償で閲覧することが可能であり,またオープンデータのみから開発されたデータであるため,同データの研究利用も可能である。 今後は町丁字等や地域メッシュなどの小地域単位で将来の空き家率や空き家数を予測する技術を開発する予定である。また,今後は商用利用(法人等)向けの提供方法についても検討を進める予定である。

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