主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2024年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2024/03/19 - 2024/03/21
都心の衰退と郊外の繁栄は20世紀の都市化過程では主な論点であった.大都市圏内において,機能集積の進む内部郊外(特にその中でも業務中心都市)と外部郊外では,その特性が大きく異なっていることが議論されるようになってきた.このような中で,内部郊外の業務核都市を対象として,居住者の時空間行動から地域特性を再定義することで,都市圏郊外における内部分化の実態と都市圏内部において業務核都市が有する役割が明らかとなると考えられ,都市の再編と発展を議論する上で有意義な示唆を与えることが可能となる.本研究は,東京大都市圏郊外に位置する業務核都市であるさいたま市を事例とし,従来の研究では十分に検討されていない時間の視点を加えた居住者行動の時空間特性から,市内の地域的性格を区分することを目的とする.さいたま市居住者の従業・通学形態及びそのODデータから時空間特性を把握した.空間特性に関しては,さいたま市における居住者行動の多くが市内での移動により占められている.このことからさいたま市は,大都市圏の郊外にありながらも自立性が強く,中心都市としての特性を有するといえる.その一方で,東京都心に近接し,交通利便性も高いさいたま市南部は,東京都心からの牽引力が依然として強い.次に,24時間を単位として時間的な特性を考察した結果,さいたま市における居住者行動の時間リズムは,出勤時間に規定される側面を有する.それは,出勤時間となる8時と帰宅時間となる17時頃に,夜間昼間人口の転換点がみられたためである.これにより,時間リズムが地域特性の形成にも影響を及ぼすことが明らかとなった.都市構造の観点では,大宮駅と浦和駅は都市の核であり,二つの核を連結させた地域からなる中心市街地がさいたま市の軸として機能していた.これらの駅を連携し一体的な中心市街地を形成するとともに,中心市街地と周辺地域とを有機的に結ぶ都市交通網を整備することにより,市内における住民の交流を促進している.東京都との関係は強い南部を除くと,市域の周辺部は,さいたま市内とさいたま市以外の県内他都市とも交流する役割を担っている.