日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 215
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京都府北部由良川河口で吹走する局地風“由良川あらし”の観測
*今枝 侑香重田 祥範
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抄録

京都府北部に位置する由良川河口では,寒候期にかけて放射霧と蒸発霧を伴う強風が陸地から若狭湾に向けて吹走する.この強風は,好天静穏日の夜間に福知山盆地で発生した冷気が一級河川である由良川に沿って流れ,下流のV字状地形で収束・加速することで,河口から若狭湾へ流れ出す現象である.このような局地的な現象は,愛媛県大洲市長浜地区で発生する“肱川あらし”の類似現象と推測されるため,河川名にちなんで“由良川あらし”と命名されている(重田・今枝,2023).しかしながら,由良川あらしの学術的な報告は一切存在しておらず,その実態はわかっていない.また,由良川あらしは発生する範囲が狭く,時間スケールが短い現象であることから,気温や気圧,風速などの微細な変動を捉える必要がある.

そこで本研究では,由良川あらしの発生日・非発生日における気温や気圧,風速の関係性を明らかにした.

由良川あらしが発生した事例として,2023年11月1日を取り上げる.この日は,冬型の気圧配置が緩み,広く高気圧に覆われた気象条件下であり,由良川河口では,放射霧と蒸発霧が発生した.観測の結果,夜間の盆地内の風速は概ね2.0m/sであった.一方,河口では,一日を通して概ね南寄りの風が吹き,17時頃から翌日11頃までは,南寄りの風が継続した.風速は,19時頃から5.0m/s以上になり,最大値で6.6m/sを記録した(最大瞬間風速:9.5m/s).ここで,本研究で得られた結果を三浦ほか(2018)で報告されている肱川あらしの観測結果と比較すると,同程度の値を示していることが明らかとなった.

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