主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2025/09/20 - 2025/09/22
今回の研究では、前学習指導要領完全実施の2015(平成27)年度から、「地理総合」が必修化された現学習指導要領完全実施の2024(平成6)年度までの10年間の兵庫県の全日制公立高校における地理授業担当教員の数的変化の分析を試みた。分析データ出所は、兵庫県高等学校教育研究会社会(地理歴史・公民)部会編集・発行の『兵庫県高等学校地理歴史・公民科教員名簿』である。同名簿は毎年9月に発行される。 この名簿には、兵庫県下の公立・私立高等学校各校に所属する地理歴史・公民科教員の氏名、専攻学科、各年度の担当科目が記載されている。2015(平成27)年度発行から2024(令和6)年度発行の10年間の同名簿の記載事項から専攻学科、各年度担当科目を抽出、データ化した。地理歴史科各専攻別教員数とその割合の推移の分析では、以下のことがわかった。日本史専攻教員が毎年最も多く、ほぼ25%以上で30%近く占めている。世界史専攻教員が次いで多く、毎年20~25%未満で推移している。地理専攻の教員数は、毎年50人台、7~9%未満と、3専攻のうちで最も少ない。地理歴史科・公民科各教科担当別教員数の推移の分析では、以下のことがわかった。地理関係の科目担当の教員数は、現学習指導要領実施初年度の2022(令和4)年度までは、150~160人台であったが、「地理総合」必修化にともない、2023(令和5)年度には201人に増えた。現学習指導要領完全実施年度の2024(令和6)年度になると252人まで増加した。2015(平成27)年度から2022(令和4)年度の毎年の地理担当教員数から100人近い増加となり、「地理総合」必修化にともない、地理担当教員の数は大幅に増えた。各専攻別の地理担当教員数とその割合の推移の分析では、以下のことがわかった。「地理総合」必修化で、地理専攻以外の教員が地理授業を担当する機会が増加している。表3をみてみると、その増加への対応は、地理専攻以外の各専攻教員が万遍なく対応しているが、特に日本史専攻教員の対応が増加している。日本史専攻で地理を担当した教員数は、2022(令和4)年度21人、2023(令和5)年度38人、2024(令和6)年度53人と大きく増加している。必修科目「歴史総合」の担当を世界史専攻と日本史専攻が分け合うなかで、専攻教員数の多い日本史専攻の教員が、より多く「地理総合」を担当するようになったと想定される。日本史専攻者が地理科目を担当するケースが増加していることはその割合からもわかる。現学習指導要領完全実施の2024(令和6)年度では21.0%と20%を超えている。対して、もともと教員数の少ない地理専攻教員が地理科目を担当する割合は低下してきている。2024(令和6)年度では17.9%となり、「地理総合」必修化前の27~35%台から大きく数値を落としてきている。地理専攻教員へ他専攻地理担当教員からの指導・助言を求める単元についての貴重な報告が、2024(令和6)年12月実施の兵庫地理学協会特別例会の「地理総合」に関するパネルデスカッションのパネリストの3名の地理専攻教員からなされた。 他専攻教員が地理授業を担当した際、地理専攻教員へ指導・助言を求める単元は、自然地理単元、つまり、地形と気候の分野が多い、との報告があった。